セイコー アストロン Nexterに初採用の「グレーセラミックス」。チタンと融合した腕元のスーパーカー

セイコーの「セイコー アストロン」Nexterシリーズより、ブランド初となるグレーセラミックスを採用した新作GPSソーラーウオッチが登場した。チタンと異素材が融合した強固な外装に、自動で衛星と通信して精度を保つ変態的なキャリバーを搭載。日常のドライブから世界を跨ぐ移動まで対応する、ハイテク素材とオーバースペックが凝縮されたエンスージアスト必見のタイムピースを紹介する。


我々クルマ好きという人種は、なぜこうも「正確無比な計器」に惹かれてしまうのだろうか。ダッシュボードの時計はGPSで補正され、ポケットの中のスマートフォンはマイクロ秒単位で現在時刻を弾き出す現代において、腕元で正確な時を知るという行為自体は、もはや絶対的な必要性を持たない。にもかかわらず、日曜日早朝のミーティングには平気で15分遅刻するような連中が、狂いのないタイムピースを求めて大枚を叩くのである。その矛盾したロマンの最新の答えが、日本から提示された。

10月9日(金)、セイコーウオッチの「セイコー アストロン(SEIKO ASTRON)」Nexterシリーズから、ブランド初となる「グレーセラミックス」を採用したGPSソーラーウオッチのレギュラーモデル2種が発売される。価格は、シルバーケースの「HAB007J」が330,000円(税込)、ブラックケースの「HAB008J」が352,000円(税込)だ。

まず注目すべきは、そのシャシー(外装)の構造である。本作では、ベゼル、ブレスレットの中駒、そしてりゅうずのトップに、ブランド初開発となるグレーセラミックスが採用されている。セラミックスといえば、スーパーカーのバネ下重量を劇的に削り、フェード現象と無縁の制動力を生み出すカーボンセラミックブレーキのような、ハイテクかつ高価な素材の代名詞だ。この艶やかな光沢を持つグレーセラミックスを、軽量で金属アレルギーを起こしにくいチタン素材(ステンレススチールに比べ約4割比重が軽い)と組み合わせているのだ。これはまさに、カーボンファイバー製のモノコックにチタン製のサブフレームを締結した、最新鋭のハイパーカーのアーキテクチャそのものではないか。異素材が調和することで、極めて先進的でスポーティな存在感を腕元に放っている。

さらに、外装の仕上げには偏執狂的なまでの「保護」が施されている。日常使いの擦り傷から時計本来の美しい輝きを守るため、チタン部分にはセイコー独自の表面加工技術「ダイヤシールド」(飛び石傷を防ぐ、超高級車の極厚プロテクションフィルムのようなものだ)が施されている。とりわけオールブラックケースの「HAB008J」には「スーパーブラックダイヤシールド」が採用されており、これは従来の硬質コーティングと比べて約1.5倍、通常のダイヤシールドと比べても約1.2倍の実用硬度(処理膜と素地を含めた硬度)を誇り、剥脱にも強く色むらのない漆黒の輝きを実現しているという。ここまでくると、もはや装甲車レベルのオーバースペックである。

また、風防には「デュアルカーブサファイアガラス」が採用され、表裏両面に光の反射を99%以上抑制するセイコー独自の無反射コーティング処理「スーパークリアコーティング」が施されている。これは、強烈な西日が差し込むコクピット内でも計器の視認性を確保する、レーシングヘルメットの高性能バイザーと同じ哲学だ。太陽光や照明がまぶしい環境下でもガラスの存在を感じさせず、表面の防汚膜によって汚れも簡単に拭き取れるという。さらに10気圧の日常生活用強化防水を備えているため、日曜日の朝、愛車の洗車中に高圧洗浄機の水しぶきを豪快に浴びてしまったとしても、まったく意に介する必要はない。

そして、ボンネットの下に収まるパワートレイン(ムーブメント)は、GPSソーラームーブメント「キャリバー 5X83」だ。フル充電時から約6ヶ月間も駆動し続けるソーラー充電機能(給油なしで大陸を横断できる高性能GTカーも顔負けのスタミナだ)を備えるだけでなく、圧巻なのはその自律的な頭脳である。ダイヤルに太陽光が当たると自動で受信タイミングを調整し、1日に最大2回、GPS衛星からの電波を受信して時刻を修正する「スーパースマートセンサー」を搭載している。これはまるで、F1マシンのテレメトリーシステムが、走行中に自動でピットウォールと通信し、コンマ数秒のエンジンマッピングのズレを走行しながら補正し続けるような変態的(もちろん褒め言葉だ)なテクノロジーである。

また、38タイムゾーンに対応するワールドタイム機能とデュアルタイム表示機能は、例えばあなたが東京からフランクフルトへ向かい、そこからアウトバーンで国境を越えてドライブするようなシチュエーションでこそ真価を発揮する。GPS衛星電波受信によるタイムゾーン修正機能が、ドライバーの操作なしに現地時間を正確に提示してくれるからだ。さらに、1/20秒計測が可能なストップウオッチ機能(12時間計)も備わっている。日常において1/20秒の精度が要求される場面など、信号待ちからのスタートダッシュのタイムを計るくらいしか思いつかないが、その「使い切れない性能」を秘めていることこそが、エンスージアストの所有欲を強烈に満たすのである。

エアロダイナミクスを思わせるデザインの作り込みも見逃せない。ケースやブレスレットと調和するグレーダイヤルにはストライプパターンが施され、立体感のある表情に仕上げられている。これは高性能エンジンの冷却フィンや、フロア下の空気を整流するリアディフューザーのストレーキを彷彿とさせる造形だ。また、ベゼルの飾り縁には12か所のインデックスの位置に合わせて規則正しい溝加工が施されている。この溝が織りなす陰影は、レーシングカーのセンターロック式ホイールナットに通じるストイックな機能美を感じさせる。カラーコーディネートに関しても抜かりはなく、「HAB007J」はグレーセラミックスにホワイトシルバーのパーツで洗練された印象にまとめられ、「HAB008J」は重厚感のあるオールブラックケースにメタリックブルーのパーツが差し色として効いている。

33万円から35万円という価格。この金額があれば、愛車のために名の通ったブランドの鍛造アルミホイールを1セット買うこともできるだろう。しかし、そのホイールは太陽光で自らを充電し、衛星と交信して時間を調整してはくれない。

スマートウォッチのように毎晩ケーブルに繋ぐ煩わしさもなく、ただ腕に巻いているだけで、宇宙空間の衛星とリンクし絶対的な精度を保ち続ける。セイコー アストロン Nexterの新作は、日常という名の渋滞路を走る我々に、極めて知的なオーバースペックを提供してくれる。週末、ステアリングを握るあなたの腕元に、これほど相応しいナビゲーターは他にいないはずだ。

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