【500台限定】なぜ日本人は「砂色」のフランス製MPVに熱狂するのか? シトロエン ベルランゴ「SABLE」待望の復活

輸入車MPV登録台数で5年連続No.1を誇るシトロエン ベルランゴに、伝説の特別限定色「SABLE(サーブル)」が500台限定で復活した。かつて販売の7割を占めたこの絶妙なサンドカラーは、なぜ日本のドライバーをここまで熱狂させるのか。標準ボディから悪路走破性を高めたXTRパッケージまで、全4モデルの価格とスペックをシニカルかつ情熱的に解き明かす。


フランスからの四角い刺客と、謎の無双状態

自動車業界というものは、常に目まぐるしいトレンドの変遷に支配されている。ある時は流線型のスポーツクーペが持て囃され、またある時は空気抵抗など一切無視したような巨大なSUVが我が物顔で公道を占拠する。しかし、そんな浮き沈みの激しい狂騒の傍らで、一切の派手な自己主張を放棄しながらも、絶対的な支持を集め続けている奇妙なクルマが存在する。それが、シトロエン ベルランゴである。

このクルマのジャンルはMPV(マルチ パーパス ビークル)である。本国フランスでは、朝早くに焼きたてのバゲットを運ぶパン屋から、泥だらけの長靴を放り込んで畑に向かう農家まで、ありとあらゆる人々の生活を支える実用車として認知されている。言わば、使い込まれたキャンバス地のトートバッグや、機能性のみを追求した職人の工具箱のような存在だ。(ここで勘違いしてはいけないのは、彼らは決してニュルブルクリンクのラップタイムを競うためにこのクルマを作ったわけではないということだ。彼らの関心は、いかに効率よく家族と荷物を詰め込み、バカンスへ向かうかという一点のみに注がれている)。

しかし、この実用至上主義の四角い箱が、ここ日本において信じられないほどの快挙を成し遂げている。驚くべきことに、ベルランゴは2021年から2025年まで、なんと5年連続で輸入車MPV登録台数No.1を獲得しているのだ。5年連続である。自動車のモデルサイクルにおいて、5年という歳月は一つの帝国が築かれ、そして崩壊するのに十分な時間だ。その間、他国のプレミアムブランドが必死になってLEDのアンビエントライトの色数を増やしたり、ダッシュボード全体を覆い尽くすほどの巨大なタッチスクリーンを開発したりして消費者の気を引こうと躍起になっている中、このシトロエンのMPVは、飄々とした顔つきで日本の輸入車MPV市場の頂点に君臨し続けていたのである。これはもはや、一種の痛快な社会現象と言っていい。

砂という名の熱狂と、絶妙な引き算の美学

そして今回、我々トップギア ジャパン編集部の元に、ステランティス ジャパン株式会社から一通のプレスリリースが届いた。日付は2026年8月20日。(ちなみに同社の本社は東京都港区にあり、代表取締役社長は成田仁氏である)。その内容は、新型のV8エンジンでも、ニュルブルクリンク専用のエアロパーツでもなく、ある「特定のボディカラー」の復活を知らせるものだった。

そのカラーの名は「SABLE(サーブル)」。

フランス語で「砂」を意味するこの色は、ベージュにグレーのニュアンスを加えた、柔らかなサンドカラーである。通常、自動車メーカーが新色を発表する際、「インフェルノ レッド」だの「ギャラクティック ブルー」だの、まるでハリウッドのSFアクション映画に登場する兵器のような、大仰で攻撃的なネーミングを好む傾向がある。(あるいは、誰も読めないようなイタリアの小さな村の名前をつけるかだ)。しかし、シトロエンは違う。彼らは堂々と、自らのクルマの色を「砂」と名付けたのである。

このカラーは、ベルランゴが日本市場で初めてカタログモデルとして正式導入された2020年に設定されたものだ。そして驚愕すべきは、その当時の販売割合である。なんと、販売されたベルランゴの7割が、この「SABLE」だったのである。もしフェラーリの7割がベージュ色で注文されたら大事件だが、実用車であるベルランゴにおいては、この控えめな色が絶対的な正解だったのだ。自然の風景にも、都市の街並みにも心地よく溶け込むこの絶妙な中間色は、シトロエンならではの個性と洗練された感性を表現しており、多くの人々から圧倒的な支持を集めたのである。

それはまるで、仕立ての良いベージュのトレンチコートのようなものだ。決して派手ではないが、羽織るだけで独特のフレンチシックな雰囲気を醸し出し、しかも汚れが目立ちにくいという実用性まで兼ね備えている。過剰なメッキパーツや威圧的なフロントグリルで周囲を威嚇するのではなく、「引き算の美学」で個性を主張する。これこそが、日本のユーザーがこの「砂色」に熱狂した最大の理由だろう。

不死鳥のごとき復活劇、あるいはフランス流のツンデレ

ところが、ここで物語は奇妙な展開を見せる。あれほどまでに圧倒的な人気を誇っていたにもかかわらず、ステランティス ジャパンは2022年に、突如としてこの「SABLE」の販売を終了してしまったのだ。(なぜ一番売れている色をカタログから消し去るのか。全くもって理解に苦しむが、これも「1919年の創業以来、独創的な発想で自動車の常識を塗り替えてきた」 シトロエンの企業哲学の表れなのだろうか。おそらく、単なる本国の気まぐれか、塗料の調合担当者が長いバカンスに出かけてしまったかのどちらかだろう)。

しかし、日本のユーザーは諦めなかった。彼らは継続的に「SABLE」の復活を要望し続けたのである。その熱意に押される形で、2023年に「BERLINGO Edition Sable」として、日本で500台限定でこの色が復活を遂げた。この時は、5人乗りの標準ボディに加えて、当時初めて7人乗りのロングボディにもこの色が採用され、大きな反響を呼んだという。

そして今回、2026年8月20日(木)より、全国のシトロエン正規ディーラーにて、現行ベルランゴに待望の「SABLE」が再び特別限定色として設定され、発売されることとなった。今回も合計500台限定である。(2025年に復活して好評を博した特別色「アクア グリーン」に続く快挙である。何度も「限定復活」を繰り返すあたり、彼らは伝説のロックバンドの解散・再結成ツアーから秀逸なマーケティング手法を学んだに違いない)。

迷える4つの選択肢と、こだわりの仕様

今回の復活劇において特筆すべきは、そのバリエーションの豊富さである。家族との日常から週末のアウトドアまで、多様なライフスタイルに寄り添うため、今回はなんと全4モデルに「SABLE」が設定されている。

まず基本となるのが、5人乗りの標準ボディ「ベルランゴ MAX BlueHDi」だ。希望小売価格(税込)は4,670,000円で、限定台数は100台となっている。
次に、3列シートを備えた7人乗りの「ベルランゴ LONG MAX BlueHDi」。こちらは希望小売価格(税込)4,850,000円で、限定台数は150台である。

さらに、週末の冒険野郎(あるいは冒険野郎を気取りたいお父さん)のためのモデルも用意されている。走行モードを選択できる「グリップコントロール」を搭載した「XTR Grip Control Package(エックスティーアール グリップ コントロール パッケージ)」を含むモデルだ。(正直なところ、このクルマで本格的なサハラ砂漠の横断や、道なきジャングルを踏破しようなどと本気で考える人間はいないだろう。しかし、ダイヤルひとつで悪路走破性をコントロールできるというギミックは、男のロマンを絶妙に刺激する完璧な罠である。雨の日のキャンプ場や、少しぬかるんだ芝生の上を走る際、このダイヤルを回すだけで、まるでラリードライバーになったかのような優越感に浸れるのだから、安い投資かもしれない)。

このタフな仕様にも2種類のボディが用意される。「ベルランゴ MAX BlueHDi XTR Grip Control Package」が希望小売価格(税込)4,812,000円で限定100台。そして最上位にして最大サイズの「ベルランゴ LONG MAX BlueHDi XTR Grip Control Package」が希望小売価格(税込)4,992,000円で限定150台である。

これら全4モデルを合算して、今回の日本向けの割り当ては合計500台きっかりとなっている。

悩む前にディーラーへ走れ

シトロエンは、個性あふれるデザインと快適性を追求した設計で、クルマのある暮らしに新たな価値をもたらすことを目指しているという。大胆な発想とクリエイティビティで日々進化を続け、多様なライフスタイルに調和するクルマを提供することこそが、彼らの使命である。

今回の「SABLE」の復活は、まさにその使命を体現したものと言えるだろう。シトロエンらしい遊び心とフレンチシックな世界観を見事に表現するこのサンドカラーは、間違いなくベルランゴのある暮らしをより豊かに彩ってくれるはずだ。

しかし、我々トップギア ジャパンから読者へのアドバイスは、ただ一つしかない。「この魅力的な砂色の四角い箱が欲しいなら、四の五の言わずに今すぐ最寄りのシトロエン正規ディーラーへ走れ」、ということだ。なにしろ、相手はあの予測不可能なフランス人である。500台が完売した後、彼らが再び塗料のレシピを忘れてしまい、次回の復活がいつになるのか、あるいは永遠にカタログから消え去ってしまうのか、誰にも(おそらくステランティス ジャパンの社長でさえも)予測できないのだから。

中古車が気になった方へ
中古車相場をチェックする在庫車多数ガリバー

今の愛車の買取価格を調べる カーセンサーで最大30社から一括査定

新車にリースで乗る 【KINTO】

トラックバックURL: https://topgear.tokyo/2026/08/94863/trackback

コメントを残す

名前およびメールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ピックアップ

トップギア ジャパン 074

アーカイブ