宇宙と交信するF1級の処理速度。シチズン エコ・ドライブ50周年限定モデルはクルマ好きの右腕に相応しいGTカーだ

シチズン アテッサから、エコ・ドライブ誕生50周年を記念した2つの限定モデルが2026年10月1日に発売される。宇宙と最短3秒で交信するGPSムーブメントと光発電の驚異的なスタミナ、そしてマジョーラカラーのごとく表情を変える文字板。クルマ好きの所有欲を激しく煽る、オーバースペックの塊のような極上タイムピースの全貌を紐解く。


我々クルマ好きは、日夜「航続距離」や「充電時間」といった呪縛と戦っている。高速道路のSAに設置された急速充電器の前で数十分を無為に過ごしたり、深夜の知らない街でハイオクを置いているガソリンスタンドを探して彷徨ったりするのは、もはや現代のモビリティライフに課せられた業のようなものだ。しかし、もし「一度フルタンク(フル充電)にすれば、パワーセーブ作動時なら完全に光を遮断した暗闇の中でも約5年間動き続ける」という狂気じみたスタミナを持つエンジンがあったらどうだろうか? しかも、そのエネルギー源が、ボンネットに降り注ぐ「太陽光」だとしたら。

シチズンから、そんな究極の持続可能性と自律性を体現したタイムピースが登場した。光発電時計「エコ・ドライブ」の誕生50周年を記念して発表された「シチズン アテッサ」の限定モデル、「Power of Green Flash(CC4084-83Z)」と「Power of Purple Aurora(CC4085-81Z)」である。2026年10月1日に世界限定各1,500本で放たれるこの2つのモデルは、我々の右足が求める俊敏なレスポンスと、左脳が求める圧倒的な環境性能を、腕元という極小のスペースで見事に両立させている。

まずは、ボンネットの下…もとい、文字板の下に収まるパワートレインに注目したい。搭載されるエコ・ドライブ GPS衛星電波時計の最上位ムーブメント「Cal.F950」は、まさにハイパーカーの心臓部と呼ぶにふさわしい。地上から約2万km上空の宇宙空間を周回するGPS衛星からの時刻情報を受信し、時刻情報のみであれば最短わずか3秒で己の時刻を修正してしまうのだ。レッドブル・レーシングのF1マシンがピットストップでタイヤを交換するのとほぼ同等のスピードで、宇宙と交信して誤差をアジャストする。この圧倒的な処理能力には、ただ感嘆するほかない。さらに、ホームタイムとローカルタイムに設定した2つの都市時刻を同時に表示し、1ステップで入れ替えられる「ダブルダイレクトフライト」機能も備わっている。例えば、東京のガレージを出発し、ドイツのニュルブルクリンクへ向かう機内で、煩わしいリューズ操作なしにステアリングの走行モードを切り替えるかのように、瞬時に現地時間へと適応できるのである。2100年2月28日まで月末のカレンダー修正が一切不要なパーペチュアルカレンダー機能も、日常のメンテナンスフリーを極めている。

さらに、より正確な時刻表示を可能にするシチズン独自の先進技術「パーフェックス」も見逃せない。「JIS1種耐磁」「衝撃検知機能」「針自動補正機能」という三位一体の機能は、言ってみれば、磁気という見えない悪路からのノイズを遮断し、万が一の衝撃にも姿勢を崩さず、瞬時にアライメントを自動補正するアクティブサスペンションのようなものだ。ステアリングから伝わる強烈なバイブレーションの中でも、決して時を刻むペースを乱すことはない。

そして、このハイエンドなエンジンを包み込むシャシー(外装)もただごとではない。ケースとバンドには、ステンレスより約40%も軽く、5倍以上の表面硬度を持つというシチズン独自の素材「スーパーチタニウム」が採用されている。これはもう、日常使いの時計というより、ル・マン24時間を戦い抜くプロトタイプレーシングカーの骨格(カーボンモノコックやチタン製サブフレーム)そのものだ。バネ下重量の軽減がハンドリングを向上させるように、腕元の軽量化は長時間のドライブでも疲労を感じさせない。極めて軽量でありながらキズに強く、錆びにくい。さらには耐メタルアレルギー仕様(CC4085-81Zは耐ニッケルアレルギー)となっている点も、長距離ツアラーとしての居住性の高さを物語っている。

だが、我々エンスージアストの心を最も激しくざわつかせるのは、その「塗装」——文字板とベゼルにおける異常なまでの色彩表現の作り込みだろう。

「Power of Green Flash」は、水平線に沈む太陽が最後に一瞬だけ放つエメラルドグリーンの閃光(グリーンフラッシュ)をテーマにしている。文字板の最下層に、光の屈折と反射で色調を表現するグリーンの「構造色フィルム」を敷き詰め、その上にインクジェットでブラックの層を重ねるという、偏執狂的なマルチレイヤー塗装が施されている。さらにサファイアベゼルリングには、ダークグリーンの蒸着を初採用。ガラス裏面に描いた放射状の線の上から蒸着を施すことで、ベゼル内側に無数の閃光が広がるような奥行きを生み出している。インデックスや日付窓のフレームにはイエローゴールドカラーがあしらわれ、ベゼルには一般的な金メッキの約10〜20倍の硬度を誇る独自の表面硬化技術「デュラテクトアンバーイエロー」が施されている。飛び石からボディを守る高級プロテクションフィルムも顔負けの強固な鎧だ。

一方の「Power of Purple Aurora」は、極寒の空に現れ、太陽と地球のエネルギーが共鳴して生まれる深い紫色の「パープルオーロラ」がモチーフだ。ブラックの文字板に立体印刷技法を用いて漆黒の夜空を彩る光の揺らぎを表現し、サブダイヤルには見る角度によって色が揺らぐマジョーラカラーのような構造色フィルムを採用して、パープルやブルーに輝くオーロラの表情を演出している。サファイアベゼルリングにはパープルからブルーへのグラデーション蒸着が施され、都市名にはピンクゴールドカラーの蒸着を採用。ベゼルには「デュラテクトピンク」が輝く、極めて妖艶で神秘的なカラーリングだ。

どちらのモデルも、自然界の極めて稀な現象を、人工的な最新テクノロジーで腕元に定着させようという、ある種の狂気を孕んだロマンに満ちている。構造色フィルムや蒸着技術を利用したこれらの表現は、見る角度によって全く異なる表情を見せる。渋滞の首都高でステアリングを握りながら、ふと腕元に視線を落とした瞬間、そこに一瞬の閃光や極北のオーロラが揺らめくのだ。それだけで、閉塞感のある車内が少しだけドラマチックなエクスペディション(遠征)のコクピットへと変わる気がしないだろうか。

さらにダメ押しとして、1/20秒計測が可能なクロノグラフ機能まで搭載されている。日常において1/20秒の精度が要求される場面など、信号が青に変わった瞬間のゼロヨン計測くらいしか思いつかないが、その「絶対に使い切れないオーバースペック」こそが、男の所有欲を満たす何よりのスパイスなのだ。

価格は両モデルともに374,000円(税込)である。37万円という金額は、ビルシュタインのハイエンドな車高調キットを組んでお釣りが来るレベルだが、太陽の光さえあれば約5年間も自律的に動き続け、宇宙と通信して時間を合わせるこの「超小型スーパーカー」を手に入れられると考えれば、決して高い買い物ではないはずだ。

発売は2026年10月1日。ガソリンの匂いと同じくらい、チタンと精密機械の冷たい感触を愛するあなたにとって、長距離ドライブの最高のアシスタントとなってくれるだろう。

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