エコ時代への美しい反逆。99台限定のランボルギーニ レヴエルト ミウラ 60°オマージュは過去と未来を繋ぐ1015馬力のタイムマシンだ

自動車業界が電動化と効率化に向かう中、ランボルギーニが伝説のスーパーカー「ミウラ」誕生60周年を記念する「レヴエルト ミウラ 60°オマージュ」を発表した。1015CVを叩き出す最新のV12ハイブリッドに、60年前のクラシックなツートンカラーを纏わせた99台限定のバケモノだ。エコ時代にV12エンジンの咆哮を轟かせる、イタリアン クラフツマンシップの狂気と情熱を斬る。


我々を取り巻く自動車業界は今、静寂と効率化という名の退屈な病に侵されている。どこのメーカーもこぞって重たいバッテリーを床下に敷き詰め、モーターのヒューヒューという音とともに、無菌室のようにクリーンで退屈な「移動手段」を作り出すことに血道を上げている。ステアリングから伝わるべき路面のインフォメーションは分厚い電子制御の壁に遮断され、クルマはドライバーの相棒ではなく、単なる「移動するスマート家電」へと成り下がろうとしているのだ。そんな息が詰まりそうな時代にあって、イタリアのサンタアガタ ボロネーゼに陣取る猛牛軍団は、どうやらまだ完全に正気を失ってはいないようだ。彼らからトップギア編集部に届いた一通のプレスリリースは、エココンシャスな現代社会に対する、ガソリンとカーボンファイバーでできた反逆の精神からなるような代物だった。それが今回発表された「レヴエルト ミウラ 60°オマージュ」である。

時計の針を60年前、1966年に戻そう。ビートルズが来日し、世界がまだアナログの熱狂に包まれ、シートベルトすらオプション扱いだったような時代に、ランボルギーニは「ミウラ」という名のバケモノを世に放った。世界初のスーパーカーと広く認知されているこの車は、V型12気筒エンジンをドライバーの背後に横置きするという、当時の常識を根底から覆すパッケージングを採用していた。最もパワフルな仕様においては最高出力385CVを叩き出し、最高速度は290km/hを超えていたという。エアバッグも、トラクションコントロールも、ABSすら存在しない時代における290km/hである。それは公道を走る戦闘機であり、一歩間違えればドライバーを容易く死の淵へと追いやる危険な魅惑に満ちていた。高性能車の新たな基準を力ずくで打ち立てたミウラは、その革新的なデザインと見紛うことのないスタイリングによって、1960年代のモーターカルチャーそのものを象徴する永遠のアイコンとなったのだ。

あれから60年。人間であれば還暦を迎え、赤いちゃんちゃんこを着て盆栽でもいじり始める年齢だ。第一線の舞台からは退き、博物館の冷暖房完備のガラスケースの中で余生を過ごすのが普通だろう。しかし、ランボルギーニの辞書に「穏やかな隠居」という文字はない。彼らはこの伝説的モデルの誕生60周年を祝うため、カリフォルニアで開催されるモントレー カー ウィークの「Lamborghini Lounge Monterey」において、最新フラッグシップであるレヴエルトをベースにした99台限定の特別仕様車を世界初公開するという暴挙…いや、快挙に出たのである。

ベースとなる「レヴエルト」は、ランボルギーニが「HPEV(ハイパフォーマンスEV)」と呼ぶ新世代のモンスターである。EVというエコな響きを持つ単語が含まれてはいるが、決して騙されてはいけない。キャビンの後ろには、我々が愛してやまない6.5リッターの自然吸気V12エンジンが、今もなお怒りの咆哮を上げる日を待ちわびて鎮座しているのだ。そこに3基の電気モーターと高比出力のリチウムイオンバッテリーを組み合わせることで、システム総合出力はなんと1,015CV、最大トルクは807Nmに達するという。0-100km/h加速はわずか2.5秒、最高速度は350km/h以上という、もはや人間の反射神経をあざ笑うかのような狂気のスペックである。初代ミウラが誇った「385CV」というかつての驚異的な数字が、まるで可愛らしいコンパクトカーのカタログスペックに思えてくるほどの凄まじいインフレぶりだ。環境に配慮するフリをしながら、シレッと1000馬力オーバーを叩き出すあたり、イタリア人のブラックジョークとエンジニアリングに対する異常な情熱には、ひれ伏すほかない。

アウトモビリ ランボルギーニのChairman and CEOであるステファン ヴィンケルマンは、このクルマについて次のように語っている。「レヴエルト ミウラ 60°オマージュは、ランボルギーニが誇るV12 HPEVスーパースポーツカーを通じて当社の歴史のマイルストーンを祝う、特別なシリーズとして生み出されました」。さらに彼は、この99台限定モデルが持つ「本物であること」「希少であること」、そして「時を超えて心に残る価値」を強調している。要するに、「我々の栄光の歴史と最新のハイテクを全部乗せした最高傑作を作ったのだから、選ばれし99人の富豪たちは黙って白紙の小切手にサインしろ」ということである。

このクルマの真骨頂は、カタログ上の数字の羅列ではなく、その偏執狂的なまでの「色と仕立て」への執着にある。「Ad Personam(アド ペルソナム)」と呼ばれるランボルギーニのビスポーク(特注)プログラムと、Lamborghini Centro Stileの協力によって生み出されたこのモデルには、初代ミウラに着想を得た9色のソリッドなボディカラーが用意されている。Rosso Arancio(オレンジがかった情熱的な赤)、Verde Scandal(その名の通りスキャンダラスな鮮緑)、Blu Tahiti(タヒチの深い青)など、いかにもイタリアらしい、見ているだけで血圧が上がりそうなネーミングが並ぶ。

さらに特筆すべきは、エクステリアの下部をメインのボディカラーと異なる色で仕上げる、クラシックなツートンカラーのスタイリングを踏襲している点だ。オーナーは、Oro Elios(ゴールド)のリバリーにAltanero Shiny Goldのホイールを合わせるか、あるいはGrigio Nimbus(グレー)のリバリーにAltanero Matt Titanium Diamondホイールを合わせるかの、究極の二択を迫られる。これは、ミウラを自動車界の神話へと押し上げた象徴的なカラーコンビネーションに対する、痛いほどの愛と敬意に満ちたオマージュである。最新のエアロダイナミクスを纏ったカーボンモノコックボディに、60年前のツートンカラーを塗る。まるで、最新鋭のステルス戦闘機に第二次世界大戦のエースパイロットのド派手な塗装を施すような、倒錯したロマンティシズムがここにはある。

細部のディテールに対するこだわりも尋常ではない。リアホイールアーチ付近のサイドシルには、レヴエルトのロゴの上部に専用の「Miura 60」ロゴが誇らしげに配置されている。リアエンドには、オリジナルミウラのレトロな雰囲気を彷彿とさせるグロスブラックのLamborghiniエンブレムが配され、ブレーキキャリパーはグロスブラック、エキゾーストテールパイプはマットブラックで渋く統一されている。主張の強いボディカラーに対し、足元や引き締め役となる細部のパーツをブラックで沈めるあたり、彼らが単なる懐古主義のコスプレに陥っていないことがよくわかる。

シザードアを上に跳ね上げてキャビンに滑り込むと、そこにもミウラの魂がしっかりと縫い込まれている。Classica Trimが施されたシートには、ミウラの特徴であった「カネロニ」パターンが、現代的な解釈を加えて採用されている。カネロニとは本来、詰め物をした円筒形のパスタのことだが、ここではクラシカルなイタリアンレザーの優雅なステッチワークを指す。この贅沢なレザー仕立てはシートにとどまらず、センタートンネル、ドアパネル、そしてキャビンとV12の猛獣を隔てるリアバルクヘッドにまで惜しげもなく展開されている。2つのシートの間には「Miura 60」の刺繍が施され、このクルマがただのレヴエルトではないことを、ステアリングを握るたびにドライバーに意識させる念の入った仕掛けだ。

そして、今回私が最も驚かされ、同時に痛快に感じたのは、ランボルギーニが歴代ミウラのオーナーに向けて用意した「究極のエコ贔屓」とも言えるサービスである。もし、幸運にもオリジナルのミウラを所有しているオーナーがこのレヴエルトを注文し、自身の愛車が用意された9色以外のカラーだった場合、なんとAd Personamプログラムを通じて「当時のカラーコンビネーションを忠実に再現する機会」が特別に提供されるというのだ。空調の効いたガレージに眠る1960年代のミウラと、隣に並ぶ1015馬力の最新HPEVを全く同じ色でコーディネートする。世界には我々の想像を絶するような貴族的な遊びが存在するものだ。

当然ながら、この選ばれた運転席側のキャビンには「Miura 60° – Serie Speciale 1 di 99」と刻印されたカーボンファイバー製のシリアルプレートが装着される。言うまでもなく99台のみの限定生産であり、肝心の価格についてはプレスリリースに一言も記載されていない。おそらく、「値段を聞かなければ買えないような人間には、最初から売るつもりはない」という、由緒正しきスーパーカー メーカーの傲慢で美しい伝統的スタンスなのだろう。

自動車が家電化し、OSのバージョンアップや自動運転の精度ばかりが話題の中心になる昨今において、ランボルギーニは60年前の「うるさくて、ガソリンを撒き散らし、ただひたすらに速くて美しい」という自動車の最もプリミティブな魅力を、最新のハイブリッド技術という分厚いオブラートに包んで我々の前に突きつけてきた。レヴエルト ミウラ 60°オマージュ。それは、エコとコンプライアンスを声高に叫ぶ無菌社会に対する、V12エンジンからの盛大な反逆の咆哮であり、極めて高価で、極めて美しく、そして心から愛すべき「時代錯誤」の結晶である。ミウラよ、永遠に。

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