このようなオークションの出品は、そうそうあるものではない。てか、むしろ、絶対にないといってもいいくらいだ。しかし、今日はその例外になるかもしれない。
これはジョン ドッドの伝説的な「ザ ビースト」で、近々、Car & Classicで販売される予定だ。
さて、「ザ ビースト」を知らない人がまず知るべきは、その全長10フィート(3m)のボンネットの下に何があるのか、ということだ。27リッターV型12気筒ロールス・ロイス マーリンエンジン、そう、スピットファイアに搭載された(スーパーチャージャー付き)ものとまったく同じものである。
1966年に構想されたビーストのローリングシャシーは、同僚のエンジニア、ポール ジェイムソンが製作し、ロールス・ロイスのタンクエンジン「メテオ」を搭載したのが最初だった。ギアボックスの達人であったドッドはトランスミッションを製作し、1970年代初頭にジェイムソンから400ポンド(6.5万円)でプロジェクト全体を買い取った。
その後、ファイバーグラスリペアという会社によってボディが作られ、ザ・ビーストにはロールス・ロイスのグリルとマスコットが取り付けられた。しかし、ドッドがスウェーデンをドライブ中に火災に遭い、そのオリジナルは失われてしまう。しかし、彼はこの車を現在のマーリンエンジン、シルバーシャドウのグリル、そして象徴的なベージュの塗装で作り直したのだ。
しかし、ロールス・ロイスはドッドの創作に難色を示し、裁判に訴えた。なぜなら、このクルマには創作者のイニシャルが前面に記されているからだ。1977年、ギネスブックに「世界で最もパワフルな車」として掲載され、1973年にはRAC(王立自動車クラブ)が最高速度183mph(295km/h)を記録している。しかし、90歳の誕生日を迎えようとしていた昨年末、ドッドは新しいリアアクスルを取り付け、サンタ ポッド レースウェイで時速200マイル(322km/h)を出し、10秒台を記録することを目指し、英国に車を持ち込む準備をしていたという(息子によれば)。悲しいことに、彼の健康状態は悪化し、2022年12月に他界した。
ドッドの家族は、ビーストが新しい家に連れていかれることを決定した。落札した人が、ドッドが頻繁に行ったように、この車を道路で使ってくれることを祈るばかりである。噂では、750馬力から1,000馬力のパワーで、燃費は0.7-2km/Lになるとか。マジか。しかし、皮肉にも車検証にロールス・ロイスと記載されているこの車が、高速道路を爆走してあなたの前を通り過ぎるのを想像してみてほしいのだ…。
=海外の反応=
「70年代初頭には、ドッド氏が世界的な自動車製造の預言者だったことに誰も気付かなかっただろう。2022年に提供されるほとんどすべてのものは、このようなもので、巨大で重量超過で、輝きに覆われ、奇妙な比率の高価なジャンクだ。大きな違いは、この車がまだ存在し、機能していることであり、今日作られるすべてのものは5年でリサイクルに適したものになっていることだ」
「本当に素晴らしい英国のエンジニアリング狂気の真の体現者の一人である、ドッド氏の安らかな眠りを願いる。私は彼が亡くなったことを知らなかったが、私は約6歳のときにこれを知ってから、最も重要な魅力の1つになっている。本当に、なんてマシンだ!」
「パワートレインが劣化するまでガレージに保管するだけでなく、本来のクルマの使い方をして維持し、運転することでジョンの遺産を引き継ぐ所有者になることを願っている。Cクラスが670馬力を出す時代、あるいはラグジュアリーセダンが1000馬力を出す時代に、その出力と最高速度が印象的に見えるべきではないかもしれないが、そうではない。実際にこの車を見たり、感じたりする経験は夢のようだ」