この2台は違うもの
「ヴァンテージ」は、かつては接尾語として使われていたが、現在はモデルラインとなっている。グレーの方は、無数のライバルが存在する中でも、パンチの効いた2シータースポーツカーである、現在のヴァンテージで、ダークカラーは、90年代のクーペの陸のヨット的存在であった、アストンマーティン ヴィラージュのヴァンテージバージョンで、4つのシートは、牛9頭分のレザーで包まれている。マジな話。
そのストーリーとは?
正直、ヴィラージュはあまり評判が良くなかったので、改良されたヴァンテージバージョンのために、アストンはあらゆる手段を講じたのである。野獣っぽさをベースとしたスタイリングに加えて、フロントの5.3リッターV8には1基だけでなく2基のスーパーチャージャーが搭載され、世界で最もパワフルな市販エンジンとなったのだ。少なくとも、その数年後にマクラーレン F1が登場するまでは、自動車業界であまりにも大きな変革だったため、アストンはヴィラージュという言葉をその名前から完全に削り取ってしまった。
パワーはどれくらい?
標準だと、旧型ヴァンテージは550bhpで2トンの車両を動かしていた。しかし、この写真のクルマは、それよりも少しパワーアップされているものだ。これは、最上級のルマンモデルで、ボンネットの下にオプションの「V600」アップグレードが施されている。つまり、最高出力は600bhp(そしてホントかよ!と思っちゃうような600lbft=814Nmポッキリ)で、最高速度は322km/hということになる。そうだ。V600キットは、アストン・ワークス・サービスの「アストンマーティンのグリーンのカーテンに覆われてこっそり活躍した」クルーによって開発された。このスペシャル・プロジェクト・チームは、現在の「Q by アストンマーティン」のものよりギミックの少ない、よりワルなバージョンのように感じる。そのため、間違いなく、より「Q」っぽいものになっている。
さぞかし速いんだろうと思いきや…
残念ながら、現代のターボカーのような瞬発力はない。だが、古い大型エンジンに2基の素晴らしいイートン製スーパーチャージャーを装着した場合にのみ発揮される、止まることのない膨らみのような、圧倒的なパワーは有している。まるでクルマがその肺を満たしてから、激しく息を吐いているようだ。これを現代のパドルシフターにつなぐと、自らを交通違反の犯罪者にしてしまいそうになるが、5速マニュアルが要求する長くて力強いギアシフトは、自分のペースを完璧に把握し、慎重さを失わない。それから、無茶苦茶な角度に立てられたトラックサイズのようなホイールから送られる軽快なステアリングも同様に。
操縦性は?
旧型ヴァンテージの4.7メートルと1,970キロの体格は、2速コーナーで速度を落とすまでは、驚くほどうまく隠されている。このクルマは、「ゆっくり侵入して、早く出る」タイプのクルマで、曲がりくねった道を心から楽しめるというタイプではない。むしろ、誰もいない長い滑走路で、その伝説的な最高速度で白熱したレースを楽しみたいクルマだ。豪華なヘッドレストを備えた4人乗りの横で、503bhpの新型ヴァンテージは、リアシートがないことやトランクがあまり役に立たないことを差し引いても、軽快さと俊敏さを感じずにはいられない。おじいちゃんが気だるそうにしているのに対して、新型ヴァンテージは軽快でアグレッシブだ。
新型は、より優れたスポーツカーになったのだろうか?
その通り。しかし、20数年前のと同じマッスルカーの雰囲気も醸し出している。新型ヴァンテージのステアリングの反応や賢い電子機器が、何層にもわたって信頼感を与えているにもかかわらず、その重量と幅ははっきりと感じられる。コーナー出口での不器用な動きが、このクルマの性能に影響を与えているようだ。特にマニュアル車では、V600よりもさらにきびきびしたギアボックスを搭載している。ドッグレッグのレイアウトは、5速であれば完璧に感じられるが、7速になると、思考力がミキサーでもかけてるかのようにぶっ飛んでしまう。スムーズさは最初の数キロ、いや、おそらく数百キロまでは得られない。しかし、愛すべき部分はまだたくさんあるんだ。だってマニュアルがないよりも、条件付きのマニュアルがある方がいいと思わない?
学んだことは?
さて、私は旧型のヴァンテージで育った方だが、このヴァンテージは私が思っていた「アストンマーティン」の意味を体現していた。その後、大人になってから乗ったDB9などの繊細で小さなDr.ウルリッヒ ベッツ時代のクルマは、どれもかなり矛盾しているように感じていた。しかし、この新型MTヴァンテージの時折不調になるトランスミッションは、私がいつも夢見ていた残忍なアストンを操っているような気分にさせてくれ、2台を並べて運転してみると、そのワイルドな外見からは想像できないほどの共通のDNAが見えてくる。ヴァンテージのバッジは、20年足らずの間に、世界最強のビリヤードルームのトランクリッドから、パンチの効いた911のライバルへと進化したが、それに伴って、いくつかの大胆な特徴は、キープし続けたままなのである。ああ、なんて愉快なんだ。
1999 アストンマーティン ヴァンテージ V600
5340ccツインスーパーチャージャー付V8、FR、5速マニュアル
600bhp, 600lbft, 0-62mph 3.9sec, 200mph (claimed...)
1,970kg
新車価格:233,000ポンド(3,500万円)、現在:500,000ポンド(7,580万円)
2021 アストンマーティン ヴァンテージ
3,982cc ツインターボ V8, RWD, 7速マニュアル
最高出力503bhp、最大トルク505lbft、0-62mph加速4.0秒、最高速度200mph
1,499kg
価格:19,130,000円
=海外の反応=
「ああ。特別仕様車の番号を一台一台に書いていた頃の話だね。40台中の37番とか。今は、400分の1と書いてあったり、どの番号かわからなくなったりしている。どうしてそんなことになったんだろう」
↑「特にアメリカのスーパーカーディーラーやアメリカのスーパーカー市場では、フェラーリやその他のメーカーが広告よりもはるかに多くのクルマを販売しているという神話があるよね。というのも、アメリカでは「限定版」という概念が同じ意味を持たないから」
「ボンネットの下にあるツイン・スーパー・チャージャーは素晴らしいね。99のマッスルカーのような外観も大好き。正直なところ、このクルマは時間の経過とともに大きく進化しており、現時点では2つの異なる性格になっている。余裕があれば両方手に入れて、必要に応じて使い分ければいいと思う」
「最近のクルマと並べると新しいものが映えるが、昔のものと並べると味気ない。私はいつでもオリジナルの方を選ぶ」
「1999年製のクルマはとても素晴らしい」
↑「写真を見ていると、あのクルマの素晴らしさを思い出す…決して新型を非難するつもりはないけれど、旧型の方がはるかに重くても、より特別な感じがする」
「僕は1999を持ってくな」