英国発「21世紀のコーチビルダー」ディビッド・ブラウン・オートモーティブ

英国と日本は価値観が似ている

英国の自動車メーカー、ディビッド・ブラウン・オートモーティブをご存知だろうか。まず誤解を避けるために言っておきたいのは、同じく英国のアストンマーティンのモデル名DB5、DB11などのDBとは全く関係がないということだ。たまたま名前が同じだっただけなのである。

ディビッド・ブラウン・オートモーティブ

左はセールス/マーケティング取締役のミシェル ゲイさん。お二人とも、日本が大好きとのこと。ミシェルさんは日本のどこが好きか、の質問に「ドン・キホーテ!」と答えていた

ディビッド・ブラウン・オートモーティブは、2013年に設立され、クラシックな外観と最先端のテクノロジーを組み合わせてハンドメイドで自動車を作っており、自らを「21世紀のためのコーチビルダー」と位置づけているユニークな会社だ。このたび、英国大使館のビジネスミーティングで来日した、創業者のディビッド ブラウン氏に、幸運にもインタビューを行う機会をいただけた。

「元々父親が建設機械を作る会社を経営したということもあり、私の人生はずっとものづくりとともにあります。カレッジを卒業した後、父親の会社に入って働いていました。後にこの会社はキャタピラー社に売却されてしまいますが、最盛期には3,000人もの従業員を抱える大きな会社だったんですよ。

ディビッド・ブラウン・オートモーティブ途中では、ライフスタイル関連のビジネスをはじめ、百貨店にメンズやレディースのファッションを取り扱ったり、レストランやバーの経営もしたりしていました。ハイエンドなターゲットのための商売でしたが、こちらの方も後に売却をしてしまいました。

もともとビジネスでは、ゼロからものを作り出すのが好きな性分なんです。でもやはり自分が一番好きなのは、製造業であり、ものづくりなのです。

起業するのはとても難しかったです。イギリスではスタート自体は優しいのですがファイナンス面では難しい部分が多く存在しています。父の会社のように建設業の方が、銀行がお金を貸してくれやすいですね」

若い頃から自動車好きだったブラウン氏だが、「クラシックカーはすぐに壊れることがよくわかりました。それがこのビジネスを始めるきっかけになったのです」という。クラシックカーはハンドルが重く、ブレーキも弱く、パフォーマンスも良くなかったので、ブラウン氏は、クラシックな雰囲気で最先端の装備のクルマを自分で作ることにしたのだ。自分が欲しいものを作ることは、商売の基本でもある。

スピードバック GT

スピードバック GT

スピードバック GT

そして最初に出したのが、スピードバック GTだ。100台までの限定生産で、受注を受けてから作るビスポークモデルとなっている。これはブラウン氏が参加した南フランスで開催された伝統的なグランドツーリングのクラッシックカーラリーから着想を得ているものだ。オーバーヒート、度重なる故障、部品性能の古さ…、クラシックカーレースで、誰もが悩まされることだ。そこで、ディビッド ブラウンは、安い現代の車両を借りてラリーを完走した。それで、60年代の美しいデザインの特徴はそのままに、現代のクルマのパフォーマンスや便利さ、安全性を盛り込んだクルマを作ろう、そう決意し、生まれたのがこのスピードバックGTなのだ。

510ps、625Nmを発揮する、5.0リッターのV8スーパーチャージャーが搭載されたクーペは、0-100km/h加速を4.8秒、最高速は250km/hだ。6速ATのみの設定となっている。

2014年の3月にプロトタイプとして発表され、2015年の後半に生産が開始され、100台までの限定生産で受注を受けてから作られるビスポークモデルである。8,000時間もの膨大な作業時間を費やし、52万ポンド(7,600万円)という値段がつけられている。

ミニ リマスタード

ミニ リマスタード

ミニ リマスタードミニ リマスタード

ミニ リマスタード

次に発表したのが、2017年にプロトタイプとして発表した、ミニ リマスタードだ。こちらはミニのボディを手に入れて再生産するという行程だ。75,000ポンド(1,100万円)となっている。「ミニはアイコニックなイギリス車で、エンジニアの面では優れているけれども、作り自体は完璧だとは思っていません。だから、パワステやエアコン、USB充電などをつけた快適装備にしました。当時問題とされていたところを解決して現在の心地よさを付け加えたものというのが、私のベストな回答だと思っているからです」

スピードバック シルバーストーンエディション

スピードバック シルバーストーンエディション

そして最近発表されたばかりの、スピードバック シルバーストーンエディションだ。これは10台の限定生産となり、価格は62万ポンド(9,070万円)だ。ディビッド・ブラウン・オートモーティブは、F1で有名なシルバーストーンに本社を移転している。このクルマはその移転の記念として製作されたものだ。601ps、766Nm、0-100km/h加速は4.3秒、最高速は250km/hと、スピードバックGTより、やや高性能である。シルバーストーンサーキットは、第二次世界大戦中、イギリス空軍の爆撃機の飛行場で、今でも滑走路が残っている。この記念モデルは、流線型のボディやグリルなどに、ジェット機のイメージを盛り込んでいる。

「これまでスピードバックGTは20台、ミニリマスタードは全部で50台の注文がありました。日本からもミニは2台の注文が入っています」

ブラウン氏は、音楽が好きで、過去には自分で歌っていたこともある。フー、レッド・ツェッペリン、ピンク・フロイドが好きだそうだ。さらに、ラリードライバーの一面も持っている。ミンテックス グループNでは、スバルで参戦し、「ギアボックスが壊れたけど、優勝したよ」と笑っていた。また、過去には日産GT-RのR34を大径マフラーにして乗ったり、フィガロに乗ったりしたこともあるそうだ。

「クラシックカーは美しいけれど、レストアに直面すると、どれだけハードなのか身をしみて感じています。だからこそ、我が社が存在する意義があると思っています」と力強く語ってくれた。

ブラウン氏は近い将来、ディビッド・ブラウン・オートモーティブを、日本で本格的に展開したいと考えている。「高品質なものづくりへの姿勢をはじめ、イギリス人と日本人の価値観は似ていると思っています。日本のみなさんにも、きっと気に入っていただけるはずです」また一つ、新たな英国車ブランドが日本に導入される日が早く来ることを願ってやまない。

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