エコや効率の話題にウンザリしているクルマ好きに最高の朗報だ。全長5.9m、5.7LのV8 HEMIを積んだ巨大トラックの覇者「RAM 1500 Limited」がまさかの日本正規上陸! 新制度により本国のピュアな味わいはそのままに、2027年早春、100台限定で先行予約がスタートする。
最近の自動車業界のニュースといえば、どれもこれもひどく真面目で退屈だ。バッテリーの航続距離がどうの、空力係数がどうの、リサイクル素材で作られたダッシュボードがどうの……。まるで学校の道徳の授業を聞かされているような気分にならないだろうか? もしあなたが、そんな優等生すぎる現代のクルマたちに少しばかりウンザリしているなら、ステランティス ジャパンから最高の(そして文字通り最大級の)カンフル剤が届いたので報告しよう。
2026年11月3日、富士スピードウェイは異様な熱気に包まれていた。ステランティス ジャパンが展開する全8ブランドのオーナー約3,000名、そして1,400台ものクルマが一堂に会した、グループ初となる巨大フェス「STELLANTIS ALL BRANDS DAY -JAPAN 2026-」の会場である。
色鮮やかなイタリア車や、洒脱なフランス車がパドックを埋め尽くす中、フィナーレを飾るシークレットステージで、巨大なベールを脱いだ一台のクルマがあった。重低音のエキゾーストノートとともに現れたその姿に、会場からはどよめきと歓声が沸き起こった。なんと、アメリカン・フルサイズピックアップの絶対的覇者、「RAM 1500 Limited(ラム フィフティーンハンドレッド リミテッド)」だったのだ。
年明けの2027年早春、まずは初期導入として100台限定で先行予約がスタートする。そう、並行輸入業者の門を叩き、面倒な手続きと謎の保証リスクに怯える必要はない。ステランティスの正規ディーラーで、堂々とこの巨大なモンスターを買える日がやってくるのだ。
巨大さは正義。全長5.9メートルの「動く不動産」
まずは、我々が直面するこのクルマの「物理的な事実」について確認しておこう。「RAM 1500 Limited Crew Cab 4x4」のボディサイズは、全長5,900mm、全幅2,090mm、そして全高は1,975mmに達する。ホイールベースだけでも3,670mmあり、車両重量は2,660kgだ。
もはやこれはクルマというより、ちょっとしたワンルームマンション、あるいは「動く不動産」と呼ぶべき代物である。日本の狭い路地裏? 住宅街のクランク? ショッピングモールの狭いコインパーキング? そんなちっぽけな悩みは、この巨大なメッキグリルで押し潰してしまえばいい(もちろん比喩だが)。隣に並ぶフルサイズのミニバンすら、まるで軽自動車のように見下ろすことができる絶対的な視界と優越感は、他のどんな高級SUVでも味わえない代物だ。
キャビンの後方に広がる荷台(5フィート7インチベッド)は、長さ1,711mm、幅1,270mm、あおりの高さ543mmを誇る。その容量は1.5立方メートル。週末のキャンプ道具やマウンテンバイクどころか、その気になれば友人一家の引っ越しすら余裕でこなせる広さだ。
さらにニクいのが、この広大な荷台の両脇(ホイールハウスの上部)に備え付けられたRAM独自の収納システム「RamBox(ラムボックス)」である。左右それぞれ約100L(1280×360×470mm)の施錠可能な密閉ストレージなのだが、なんとここには水抜き穴がついているのだ。つまり、どういうことか? ここに大量の氷を敷き詰めれば、ビールやコーラをキンキンに冷やす「走る巨大クーラーボックス」として使えるのである。テールゲートを下ろしてBBQを楽しむ、アメリカならではのテールゲート・パーティー文化が生んだ、最高にイカした、そしてバカバカしいほど実用的な装備じゃないか。
絶滅危惧種の「V8 HEMI」を合法的に響かせろ
ボンネットの下に収まるのは、我々クルマ好きが愛してやまない至宝、5.7リッターのV8 HEMIエンジンだ。最高出力395PS、最大トルク556Nmという怒涛のパワーを路面に叩きつける。アクセルを踏み込めば、モーターの無機質な「ヒューン」という音や、ダウンサイジングターボの苦し紛れな音ではない、あの腹の底に直接響くような図太いV8サウンドが轟く。ちなみに、低負荷の巡航時には4気筒を休止させるMDS(気筒休止システム)も備わっており、この巨大な怪物なりに「少しは環境に配慮しているフリ」を見せてくれるのも愛嬌がある。
そして驚くべきは、ピックアップトラックという「働くクルマ」の骨格でありながら、クラス唯一となる「ACTIVE-LEVEL 4コーナーエアサスペンション」を標準装備していることだ。なんと車高を5段階に自動および手動で調整できるのである。
高速道路をクルージングする際は空力と直進安定性を高めるために車高を約2cm下げ(エアロモード)、岩場や泥濘地を走る際は車高を約5cm持ち上げてアプローチアングルを稼ぐ(オフロードモード)。そして、おばあちゃんや小さな子供を乗せる時、あるいは荷台から重い荷物を下ろす時には、プシューという音とともに車高を約5cm下げてくれる(エントリー/エグジットモード)。
試乗を終えたステランティス ジャパンの成田 仁社長も「荒波を感じさせない豪華なクルーザーのような乗り心地。5.7L V8 HEMIの余裕ある加速とどっしりとした安定感、そして視界の広さによるストレスのない取り回しに心底驚かされた」と語っている。トラックを運転しているはずなのに、まるで超高級なモーターヨットを操舵しているような、不思議な全能感に包まれるのだ。
キャビンは欧州ラグジュアリーサルーンも逃げ出す豪華さ
「いくらデカくてエアサスが付いていても、しょせんはアメ車のトラックでしょ? 内装はプラスチックだらけなんでしょ?」もしあなたがそんな古い偏見を持っているなら、ドアを開けた瞬間に雷に打たれたような衝撃を受けるはずだ。ひとたびキャビンに足を踏み入れれば、そこは欧州のプレミアムブランドも真っ青の、レザーと本木目がふんだんに使われた超高級ラウンジである。
とくに後席の広さは異常だ。クラス最大級となる44.8インチ(1,138mm)のリアレッグルームが確保されており、大柄な大人が足を組んでもまだ余裕がある。リクライニングも可能で、もはやショーファードリブン(お抱え運転手付きのクルマ)としてVIPを送迎できるレベルである。もちろん、前席のシートには太ももからお尻までを優しく揉みほぐしてくれるマッサージ機能やベンチレーションが完備されている。
デジタル環境も規格外だ。ダッシュボードにはクラス最多となる「4つのスクリーン」が並ぶ。センターコンソールには巨大な14.5インチのUCONNECT 5 タッチスクリーンが鎮座し、ドライバーの目の前には12インチのフルデジタルクラスター、そしてフロントガラスにはヘッドアップディスプレイが投影される。極めつけは、助手席の目の前に埋め込まれた10.25インチのパッセンジャー専用タッチスクリーンだ。HDMI入力まで付いているため、ドライバーが運転に集中している横で、同乗者はスマホやゲーム機を繋いで映画やゲームを楽しむことができるのである。
さらに、センターコンソールにはスマートフォンを2台同時にワイヤレス充電できるデュアルチャージングスロットを備え、車内には900Wの大出力を誇る19スピーカーのHarman Kardonプレミアムサウンドシステムが張り巡らされている。V8の咆哮に飽きたら、この極上のオーディオでウエストコースト・ヒップホップでも流せば、そこはもう完全にカリフォルニアだ。
官僚の粋な計らい? 「特別認定制度」と「1ナンバー」という最高のチート
では、なぜこんなアメリカン・モンスターが、突然日本で正規販売できるようになったのか? それは、国土交通省が2026年2月に施行した「米国製乗用車に関する新たな認定制度(特別認定制度)」のおかげである。
小難しい法規の話は省くが、要するに「貿易摩擦を解消するために、アメリカの安全・環境基準で作ったクルマを、わざわざ日本の基準に合わせて大幅改造しなくても売っていいよ」という、お上の粋な計らいである。この制度のおかげで、リアウインカーの点滅色を赤からオレンジ(アンバー)に変えたり、タイヤ空気圧警報装置(TPMS)の表示を日本語化したりといった最小限の変更だけで、アメリカ本国のピュアな仕様と乗り味がそのまま日本に上陸することになったのだ。
そして、ここからが日本でこのクルマに乗る最大のメリットである。この全長5.9mの怪物は、国内では「1ナンバー(普通貨物車)」として登録されるのだ。
排気量5,700ccのクルマを普通乗用車(3ナンバー)として登録すれば、毎年の自動車税は年間8万8,000円にもなる。しかし、1ナンバーの貨物車であれば、課税の基準は「排気量」ではなく「最大積載量」になる。なんと、毎年の自動車税はわずか16,000円(※積載量1トン以下の場合の目安)で済んでしまうのだ! もちろん毎年車検になるという手間はあるが、5.7LのV8エンジンを積んだ超高級車を、コンパクトカー以下の税金で維持できるという「合法的なチート技」が使えるのである。
米国の権威ある自動車雑誌「MOTOR TREND」において、ブランド独立後の15年間で実に7度もの『TRUCK OF THE YEAR』に輝いた輝かしい実績を持つRAM。ステランティス ジャパンは、「クルマは単なる移動手段やステータスを示すものではなく、自分らしさや生き方を主張する『ステートメント』であるべきだ」と語っている。
右を向いても左を向いても、似たようなデザインの行儀の良いSUVばかりが溢れる今の日本において、この巨大なRAM 1500 Limited以上に、乗り手の強烈な個性を主張できるクルマが他にあるだろうか?
2027年早春、まずは100台の限定モデルが日本の道を走り出す。彼らが街に現れれば、日本の道路は少しだけ狭く感じるかもしれない。だが、間違いなくクルマを取り巻く風景はもっと面白く、もっと自由になるはずだ。エコノミーでエコロジーな隣人たちの視線など気にせず、V8の咆哮とともに我が道を突き進む。そんな痛快なカーライフを渇望する大人たちにとって、これ以上の選択肢はない。




