ランクルとJBL、レクサスとマークレビンソン 単なる純正オーディオではない、ハーマンが貫く「車種専用設計」の神髄

ハーマンが手掛ける純正オーディオは、車両開発の初期段階から関わる「車種専用設計」。その音作りへの揺るぎないこだわりと哲学を徹底解説する。

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ハーマンインターナショナルは、2025年秋季の新製品内覧会「HARMAN ExPLORE TOKYO 2025」を代々木上原のOPRECTにて開催した。本稿では、イベントのプレゼンテーションで発表されたJBLブランドの新製品を中心に、その概要と特徴を報告する。

伝統と革新の80周年へ、JBLラグジュアリーオーディオの現在地
1946年の誕生以来、家庭用スピーカーの分野を牽引してきたラグジュアリーオーディオブランドJBLは、来たる80周年に向けて大きな一歩を踏み出す。その象徴となるのが、今年から新たにスタートした「JBLサミットシリーズ」である。

この秋、ミッドバスにベントバスを復活させた3ウェイシステム「JBL Summit Makalu」、100cmウーファーを備えた3ウェイシステム「JBL Summit Pumori」、そしてブックシェルフ型の「JBL Summit Ama」の3機種が順次発売される。1本300万円を超えるハイエンドスピーカーを開発し続けるJBLは、まさに「生ける伝説」であり、このサミットシリーズはブランドの伝統と革新を体現する存在となるだろう。

「映画館よりも映画館」- クラウドファンディングで1.4億円を突破したサウンドバー
ホームシアター市場において、JBLは2022年に発売した完全ワイヤレスサラウンドシステム「BAR 1000」で大きな成功を収めた。そして今年、3年ぶりのリニューアルモデルとして「BAR 1300X Mark II」が登場した。

本機は6月からクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」でプロジェクトを開始。進化したサウンドとサラウンド技術を訴求するため、体験会や映画レビューサイトとのコラボレーションを展開した結果、体験者からは「映画館よりも映画館」「世界に入り込んだようなシアター体験」といった絶賛の声が相次いだ。動画配信サービス(VOD)の普及を背景に、自宅で良質な音響を楽しみたいという需要の高まりを的確に捉え、プロジェクトはJBL史上最高額となる総支援額1.4億円超を達成した。

「BAR 1300X Mark II」は、11.1.4チャンネルの完全ワイヤレスサラウンドシステムである。最大の特長は、ケーブルを必要としない脱着式のリアスピーカーであり、これにより設置の自由度が飛躍的に向上した。Dolby Atmos、DTS:Xといった最新の音声フォーマットに加え、日本独自のIMAX Enhancedにも対応する。サウンドバー本体には合計29個のスピーカーユニットが搭載されており、圧倒的な没入感を実現する。10月からの一般販売が開始され、JBL公式ストアでの価格は228,800円である。

さらに、7.1.4チャンネルの「BAR 1000 Mark II」(159,500円)やJBL公式ストア限定モデルの「BAR 800 Mark II」(110,000円)など、合計5つのラインナップであらゆるニーズと部屋のサイズに対応する。

8年ぶりの新シリーズ「JBL Grip」- ポータブルスピーカーの新たなアイコン
全世界で販売実績No.1を誇るJBLのポータブルスピーカー。そのラインナップに、8年ぶりとなる新シリーズ「JBL Grip」が加わる。

「JBL Grip」は、定番の「Flip」シリーズよりも一回り小さい、重量385gの軽量モデルである。縦型のスリムな形状は設置場所に困らず、上位モデルに採用されるAIサウンドブーストやデュアルパッシブラジエーターにより、サイズを超えた迫力ある低音を再生する。さらに、本機独自の機能として背面にアンビエントライトを搭載し、音楽に合わせたムード演出やランタンとしての使用も可能だ。防水防塵性能はIP68に対応し、アウトドアシーンでも安心して使用できる。カラーは5色展開で、JBL公式ストアでの価格は13,970円で発売されている。

また、参考出品として、特製ハンドルと2本のマイクが同梱された「PartyBox On-The-Go 2」も紹介された。ポータブルカラオケやPAシステムとしても活用できる多目的スピーカーで、今秋5万〜6万円程度での販売が予定されている。

オープンイヤー型イヤホンの新時代を切り拓く「Sense Pro」と新技術「Auracast」
完全ワイヤレスイヤホン市場において、JBLは「パーソナルサウンド」「インディビジュアルフィット」「ユニバーサルプレー」の3つを開発の柱としている。個人の聞こえ方に合わせるチューニング機能、多様な耳の形状に合わせる製品展開、そしてあらゆる機器とのシームレスな接続性を追求してきた。

市場のトレンドがノイズキャンセリング性能の競争から、快適な「ながら聞き」を可能にする「オープンイヤー型」へと移行する中、JBLは「センス」というキーワードを掲げ、独自の価値を提案する。それは単なる「ながら聞き」ではなく、音楽や映像を高品質で楽しみながら、周囲の音も自然に感じられる体験である。

その思想を体現するのが、この秋登場するオープンイヤー型の最上位モデル「Sense Pro」だ。音質を追求し、16.2mmのDLC(ダイヤモンドライクカーボン)ドライバーを搭載してハイレゾオーディオに対応。角度調整可能なヒンジにより、様々な耳の形状に最適にフィットする。さらに、JBLのオープンイヤー型としては初めて、専用アプリによる聴力測定でサウンドを個人に最適化する機能も搭載した。

そして最大の注目点が、JBLとして初めて対応する新技術「Auracast」である。これは、一台のスマートフォンから複数の対応スピーカーやイヤホンへ、遅延なく同時に音声を送信できる技術だ。

イベントでは、この「Auracast」の可能性を示すデモンストレーションとして、ダブルダッチの世界チャンピオン「REG☆STYLE」によるパフォーマンスが披露された。パフォーマー全員が「Sense Pro」を装着し、完全に同期された音楽を聴きながら演技を行った。メンバーは「ジャンプしても外れないフィット感」と「仲間と同じ世界に入れる一体感」に興奮を語り、音楽を共有してリズムを合わせるこの技術が、チームスポーツの練習やパフォーマンスに革命をもたらす可能性を示唆した。

独自の「ソニックアーク」技術で音漏れを抑える「Soundgear clips
JBLはもう一つのオープンイヤー型イヤホンとして、イヤーカフ型の「Soundgear clips」を発表した。本機は「ながら聞き」に最適なモデルとして位置づけられ、サウンドと着け心地を両立させる独自技術「ソニックアーク」を搭載している。

これは、イヤホンのバッテリー部分とスピーカー部分を繋ぐアームを特殊なカーブ形状にすることで、装着時にスピーカーが外耳道の方を向くように設計された技術である。この絶妙な角度により、音を鼓膜にダイレクトに届けることができ、結果として音漏れを大幅に低減。小さな音量でも、また屋外の騒音下でもクリアなサウンドを実現する。サンプルを提供していただいたので、毎日のように聞いているが、長時間でも全く疲れない。音楽を集中して聞きたい場合には、ノイズキャンセリング機能に優れたTour Pro 3が良いが、長い移動時間の場合には、Soundgear clipsの方が適している。見た目の形状から、耳から外れやすくて全部音漏れするんじゃないか、と最初は思ったが、全くそんな心配は無用だ。むしろ、適当に装着しても、耳から落ちる心配はほぼないと言って良い。

JBLは、すでに発売されているモデルに加え、この秋登場する「Sense Pro」と「Soundgear clips」によって、形状の異なる3つのオープンイヤー型ラインナップを揃えることになる。これにより、ユーザーは自らのライフスタイルや好みに最適なフィッティングスタイルを選択できるようになる。

JBLとトヨタ、そしてMark Levinsonとレクサス - 車室内音響の理想を追求するパートナーシップ
ハーマンインターナショナルのオートモーティブ部門は、自動車という特殊な空間において最高の音響体験を提供するため、長年にわたり世界の自動車メーカーと強固なパートナーシップを築いてきた。今回の内覧会では、その代表格であるトヨタ自動車との「JBL」、そしてレクサスとの「Mark Levinson」における取り組みが紹介された。

JBLはカーオーディオにおいても、ブランドの根幹をなす「エモーショナル」「エキサイティング」「ダイナミック」「ライブ感」という理想の音を追求している。そのサウンド哲学が評価され、トヨタのプレミアムカーオーディオパートナーとして長年の実績を誇る。ポータブルスピーカーからプロフェッショナルオーディオまで、多様なライフスタイルに対応するJBLのブランドキャラクターは、カローラからランドクルーザー、MIRAIに至るまで、トヨタの幅広い車種ラインナップと高い親和性を持つ。会場にはJBLプレミアムサウンドシステムを搭載した「ランドクルーザー250」が展示され、そのパワフルでクリアなサウンドを体験する機会が設けられた。

一方、Mark Levinsonとレクサスの関係は、今年でパートナーシップ締結25周年という節目を迎えた。その出会いは運命的であったと語られる。25年前、カーオーディオへの参入を模索していたMark Levinsonは、自社の求める繊細な音を再現できるだけの静粛性を持つ車を探していた。欧州の高級車メーカーからのオファーさえ断っていた彼らが唯一、「そこにミューズを見つけた」と語ったのがレクサスであった。

初代レクサス LS400をテストした際、他のどの高級車よりも3デシベルも優れた静粛性を確認したMark Levinsonは、レクサスとならば理想のカーオーディオが実現できると確信した。以来25年間、両社は「最高の音を共に作り上げる」という理念のもと、正式な契約書を交わすことなく、紳士協定(口約束)のみで「Mark Levinsonはレクサスだけ、レクサスはMark Levinsonしか使わない」という強固な信頼関係を築いている。現在、Mark Levinsonのサウンドシステムは全てのレクサス車に標準またはオプションで設定されており、その関係の深さを物語っている。会場に展示された「レクサス RX」では、その静寂の空間に広がるピュアで解像度の高いサウンドを体感することができた。
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ハーマンインターナショナルのカーオーディオ ブランド パートナーシップでシニア マーケティング マネージャーを務める黒谷繁希氏に聞く - オートモーティブ事業部の現在と未来
― まず、黒谷様がハーマンインターナショナルに入社された経緯についてお聞かせください。
ハーマンインターナショナルに入社して1年と少しになります。前職はタイヤメーカーでマーケティングを担当しており、もともと自動車業界におりました。自動車業界が発展していく中で、今後は特に車内空間(インキャビン)での体験価値が重要になると考え、音楽分野に興味を持ちました。ハーマンのオートモーティブ部門が、カーオーディオだけでなくインキャビン全体のビジネスに事業を広げている点に魅力を感じ、入社を決意しました。

― オートモーティブ事業部の現在の課題は何でしょうか。
私たちのビジネスは、主に自動車メーカー様(OEM)への製品提案が中心となるため、一般の消費者の方々へ直接情報を届ける機会が少ないのが現状です。そのため、「トヨタにJBL」「レクサスにMark Levinson」というコラボレーションをご存じないお客様がまだ多くいらっしゃいます。この認知とご理解を広げていくことが、現在の大きな課題だと認識しています。

― 日本ではトヨタ、レクサス、スバルとの協業が中心ですが、今後のブランド展開について教えてください。
ハーマンはグローバルで多くの自動車メーカーと提携していますが、日本市場においては、現在パートナーであるトヨタ様、レクサス様、スバル様との関係をより一層深めていくことに注力します。JBL以外のブランドを積極的に広げるというよりは、既存のパートナーシップを通じて車種の付加価値を高め、お客様の満足度を向上させていく方針です。特にレクサスにおいてはMark Levinsonが唯一のオーディオ選択肢であるため、その責任は非常に大きいと感じています。

― 自動車メーカーとは、どのように開発を進めているのでしょうか。
私たちの製品はメーカーオプションとして提供されるため、車両開発の非常に早い段階、言わば車の骨格が決まる頃からメーカー様と密接に連携し、最適な音響環境を共に作り上げていきます。ユーザー様からのフィードバックは、メーカー様経由でいただくこともありますし、私たちがディーラーを訪問した際にオーナー様から直接お話を伺うこともあります。SNSなどの情報も参考にさせていただいています。

― OEM製品に対して「名前を貸しているだけ」という誤解があることについては、どうお考えですか。
そのような誤解が生まれてしまうのは、私たちのマーケティング活動が不足していることが原因だと考えています。「20万や30万円のオプションで、あのMark Levinsonが手に入るはずがない」といった市場のイメージも、私たちが乗り越えるべき課題です。実際には、先ほどお話ししたように、車両開発の初期段階から膨大な時間をかけて専用設計とチューニングを行っています。

― ユーザーからは、どのような評価の声が届いていますか。
「やはり一味違う」「音の粒立ちや解像度が素晴らしい」「まるで目の前で演奏しているようだ」といったポジティブな声を多くいただきます。JBLは「エキサイティングでパワフルな音」、Mark Levinsonは「走る、曲がる、止まるだけではない、静粛な車内での上質な体験が車種のキャラクターに合っている」と評価いただくことが多いですね。私たちは、各ブランドや車種のキャラクターに合わせて真摯に音作りをしており、メーカー様が狙うお客様の姿と、ほぼ同じ思いで製品を作り上げています。

― EV化で車内が静かになることは、音作りにどのような影響を与えますか。
車の電動化によって静粛性が向上することは、私たちにとって大きなチャンスです。静かな環境になることで、JBL、Mark Levinson、ハーマンカードンがそれぞれ目指す理想の音に、より近づけやすくなると考えています。音作りを大きく変えるというよりは、これまで以上に各ブランドの個性を際立たせ、お客様の満足度を高めることができるでしょう。

― 今回の展示で、ランドクルーザー250とレクサスRXを選んだ理由を教えてください。
この2台はそれぞれのブランドを象徴するアイコニックな車種です。自動車専門メディアの方々だけでなく、ライフスタイルやガジェット系のメディアの方々にも広く私たちの取り組みを知っていただく上で、最適な選択だと考えました。来年以降には、新しいESなども展示できることを期待しています。

― 最後に、オートモーティブ部門の今後の展望をお聞かせください。
私たちの未来戦略は、これまでと変わらずOEMメーカー様と共に歩むことです。メーカー様の戦略に沿って、音響をはじめとするインキャビン製品でプラスアルファの価値を提供し、車両全体の販売促進に貢献していきたいと考えています。特に価格競争が激しい市場環境においては、音質の優位性やAIを活用した新技術などでサポートを強化していくことが重要になると考えています。

【開発のこだわり】JBLサウンドの哲学「ラウド・アンド・クリア」とは
試乗(試聴)ブースでは、開発スタッフからJBLのカーオーディオにおける音作りの哲学について説明があった。

JBLのブランド名は、創業者ジェームス・B・ランシングの名に由来する。その原点は映画館の音響システムであり、いかに観客にクリアで迫力のある音を届けるかという探求から始まった。そこで生まれたのが「ラウド・アンド・クリア」というコンセプトだ。これは単に大きな音を出すのではなく、「大きな音量でも、一つひとつの音が潰れずにはっきりと聞こえる」ことを意味する。

この哲学はカーオーディオにも受け継がれている。静かなバラードであっても、ボーカルの息づかいや楽器の繊細な響きなど、レコーディングされた音源が持つ大切な要素を忠実に再現することを重視している。

ランドクルーザーのように広く複雑な車室内で理想の音響を実現することは、アコースティックエンジニアにとって大きな挑戦である。開発は車両の試作段階からスタートし、走行中のロードノイズなども考慮しながら、何度もチューニングを繰り返す。そうして、パワフルな楽曲の中でもボーカルの柔らかな声やパーカッションの細かい音までがクリアに聞こえる、車種ごとに最適化されたサウンドが完成する。

JBLのエンジニアが目指すのは、特別な音響ルームを作り出すことではない。運転席、助手席、後部座席、乗車しているすべての人々が、その車の空間で気持ちよく良い音を楽しめること。それこそが、JBLがすべての車種で追求し続ける「ラウド・アンド・クリア」の真髄なのである。

今回の取材を通して明らかになったのは、ハーマンが手掛ける純正プレミアムオーディオが、単なる「オプション装備」という言葉では片付けられない、深い哲学とエンジニアたちの情熱に基づいているという事実である。

ランドクルーザーのダイナミズムを加速させるJBLの「ラウド・アンド・クリア」なサウンド。レクサスの静謐(せいひつ)な空間を、息を呑むほどピュアなコンサートホールへと変えるマークレビンソンの音響。それらは、車両開発の初期段階からメーカーと一体となって作り上げられた「車種専用設計」だからこそ到達できた、究極のマリアージュと言えるだろう。

次にディーラーへ足を運ぶ機会があれば、ぜひエンジンだけでなくオーディオのスイッチも入れてみてほしい。そこには、いつもの移動時間を、心を揺さぶる豊かな音楽体験へと昇華させる「もうひとつの走りの歓び」が待っているはずだ。電動化が進み、車内空間の価値がますます問われる未来において、彼らが奏でるサウンドは、私たちのカーライフをさらにエモーショナルなものにしてくれるに違いない。
400号記念:UK400マイルロードトリップ/フェラーリ F80/フェラーリハイパーカー:トップギア・ジャパン 069

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