ディーラー探訪でブランドの今が見えてくる:MUTT 東京セントラル

MUTTという英国バーミンガム発祥のオートバイブランドをご存知だろうか?MUTTと書いて「マット」と読む。このバーミンガムという街はかつてオートバイ産業が盛んでBSA、ノートン、ヴェロセットなど数多くの名車を生み出したオートバイの聖地である。現在はクリエイティブな才能が集まる街として発展しているが、そんな歴史的な地で2016年に誕生したのがMUTTである。クラシックな英国風カスタムルックが特徴で、どのモデルを見ても個性的で素直にカッコいい。今回は2019年に日本上陸を果たしたMUTTの旗艦店である「MUTT東京セントラル」を訪れ、伊藤店長にこの新しいブランドの魅力について聞いてみた。

■日本最大の展示台数を誇るショールーム

今回訪れたMUTT東京セントラルの店舗は杉並区宮前の井の頭通り沿いに位置する。かつてここにはサイドカーを販売する店舗があり、オートバイ好きにはなじみのある場所だという。

MUTT東京セントラルはブランドの旗艦店として今年の3月にオープンし、店内には12台の個性豊かなモデルが展示されている。日本で最大級の展示台数を誇るこのショールームは東京のお客様だけでなく、地方から出張のついでに訪れるお客様も多いという。またショールームの2Fの壁には大きくMUTTのロゴが描かれ、アパレル商品の展示も充実し、MUTTの世界観にどっぷりと浸れる落ち着いた空間が広がっている。

MUTTとは英語で「雑種犬」という意味があるのだとMUTT東京セントラルの伊藤店長に聞いた。これは創業者のベニーとウィルがクールで小回りの利くレトロなカスタムバイクを作るという夢を実現するために様々な部品を組み合わせてカスタムしたことに由来する。そしてそのカスタムの幅はさらに広がり、現在では125ccで7モデル、250ccで10モデルの個性豊かなラインナップが揃う。

■最大の魅力は個性的なデザイン

伊藤店長によれば、たくさんあるMUTTの魅力の中で一番大きなものは、そのデザイン性の高さだという。各モデルの醸し出す全体の雰囲気もさることながら、タンクやフェンダーの造形やフェンダーステー形状など細かい部分へのこだわりは英国らしいのクラフトマンシップを感じる。

そして、どのモデルもバランス良く、カスタムが「完成」されているという点も魅力であるという。カスタムすることはバイク乗りにとって楽しみの一つであるが、MUTTでは自分の目指すカスタムの完成形をラインナップの中に見つけることができる。完成されたヴィンテージスタイルのカスタムバイクを新車として手に入れられるというのは、忙しい現代のライダーには魅力的に映るのだろう。

そして、手が届きやすい価格が初めてのバイクオーナーやリターン ライダーの背中を押してくれるという。価格帯は125ccで573,100円〜、250ccで694,100円〜となる。気軽に乗れて、維持が簡単で、安く、それでいて大型の旧車と同じようなスタイルとサウンドを楽しめるバイクを作りたいというMUTTの精神が価格にも反映されている。125ccと250ccのバイクしか作らない理由もここにある。

■「秋田犬」からインスパイアされたモデル

MUTT東京セントラルの一番人気のモデルを聞くと伊藤店長は間髪入れずに「AKITAのシルバーモデル」だと答えてくれた。AKITAという日本名はそれだけでも親しみを持てるが、その名から想像できるように「秋田犬」からインスパイアされたモデルで、秋田犬のようなガッチリとした16Lのタンクが特徴だという。カフェレーサー風の美しい仕上げは見ているだけで満足できるだろう。その次にこの店で人気なのはSABBATH(サバス)で、乗車姿勢が楽なことと、こだわりの左出しマフラー、そしてダイヤモンドステッチされたこだわりのシートが特徴だという。

■見た目のカッコよさと人と被らない魅力

MUTT東京セントラルのお客様は初めてのバイクオーナーから40〜50代のリターンライダーまで幅広い。大型バイクのセカンドバイクとして併用や、通勤や週末の楽しみとして使われるなどそのスタイルは様々だが、購入を決める決定的な要因はやはり「見た目のカッコ良さ」だという。若いお客様の中にはインスタグラムでMUTTを見つけてその世界観に興味を持って来店されることも多いという。そして伊藤店長に競合車は何ですか?という意地悪な質問もしてみたが、来店するお客様はほぼ競合車はなく、MUTTのモデルラインナップの中で迷われるケースが多いと答えられた。それだけMUTTの個性的で完成されたデザインは人を惹きつけるのであろう。

また、人と被らないモデルであることもお客様にとって魅力的に映るという。その美しさと珍しさからよく人に話しかけられるらしい。そんな些細なこともこのブランドを所有する喜びになる。

伊藤店長にお客様にいまオススメしたいモデルを聞いてみた。空冷の単気筒モデルのプリミティブなライドフィールも魅力的だが、新開発された水冷単気筒DOHC4ストロークエンジンを積んだDRK-01をオススメしたいとの回答だった。このモデルは今年のモーターサイクルショーで初お披露目され大きな反響を呼んだ モデルである。ライトにはLEDが組み込まれ、ヴィンテージ感と未来感が融合する唯一無二の存在感を示す。

■日本のMUTTブランドの牽引役になりたい

3月にオープンしたMUTT東京セントラルは新しい大型店舗ということもあり、お客様からの期待も大きい。店長は今後ディーラー独自のイベントやツーリングなどお客様に楽しんでいただける機会も増やしたいと言うが、それだけではなくMUTT本社の哲学や理想の姿を実現すべく、販売やコミュニケーション、ライフスタイルの提案などあらゆる面で日本でのMUTTブランドを牽引していく存在になりたいという。

この店舗の最大の特徴は数多くのモデルを実際に見比べられることである。予約をしていただければ試乗もできるが、伊藤店長は、ただバイクに跨りに来るだけでも、アパレルを見に来られるだけでも良いのでぜひお気軽に来店いただきMUTTの世界観に触れてほしいと語る。

現在はライセンス費用をサポートするキャンペーンも実施している。MUTTに一目惚れをして購入を決意してからライセンスを取りに行ったお客様もいるという。

自分の気に入った美しいものに囲まれて暮らすとことは誰もが憧れる。しかしそんなパーフェクトなモノ選びをすることはとても難しい。MUTTは人の価値観や人生観を変えるようなエモーショナルなモデルを世に送り出している。ぜひそんな人生のゲームチェンジャー となるモデルとの素晴らしい出会いをMUTT東京セントラルでしてほしい。

MUTT 東京セントラル
168-0081 東京都杉並区宮前4-25-19
TEL:03-5941-7753
営業時間:10:00-19:00
定休日:木曜日

【取材を終えて】
MUTT東京セントラルの伊藤店長はまだ26歳と若いが、バイク好きが高じてこの世界に入ってきたという。柔らかく誠実な語り口は、百戦錬磨のディーラーの店長というよりは、そっとお客様の背中を押してくれる良きアドバイザーなのであろうと取材を通じて感じた。MUTTで一番好きなモデルを尋ねたところ黒いバイクが好きなのでSABBATH(サバス)のマットブラックモデルだと答えてくれた。このモデルは「ドアを蹴破り、テキーラのショットを叩き込み、プッカパイをレンジに放り込んで、ボスの椅子に座って食べるためにある。」と少々荒っぽいコメントでホームページに紹介されている。伊藤店長の穏やかな人柄の奥底にある熱い情熱をこのモデル選びからうかがえる。

レトロでありながらモダン、ダークだがクール、都会的でありながら野性的という相反する個性が同居していることがこのブランドの最大の魅力だと感じた取材であった。

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