時は2020年、これはイアン カラムがデザインした、初代アストンマーティン ヴァンキッシュの「新しい」モデルである。信じるか信じないかは、あなた次第―。いやいや、都市伝説じゃないよ、今回は本当だ。
イアン カラムといえば、その名をご存知の方も多いだろう。元ジャガー、アストンマーティン、フォードのデザイナーという経歴を持つ。初代ヴァンキッシュは彼の手によるデザインだ。このクルマは、彼の新会社からの新プロジェクトとなるのだ。初めて目撃してからわずか9ヶ月後、この真っ赤で、印象的な、生産バージョンが登場した。名前は、アストンマーティン カラム ヴァンキッシュ 25 by R-リフォージドという長いものだ。 限定生産の25台は、540,000ポンド(7,300万円)から始まる価格で、お届けされる…。あなたが、自身のヴァンキッシュを手に入れる必要があれば、の話しだが。
このクルマの「何 」の話の前に、「なぜ」の話をしよう。確かに、オリジナルの初代ヴァンキッシュが、カリスマ性に欠ける醜いクルマだ、なんてことを主張する人はほとんどいないだろう。なぜ、そのデザイナー自身が、その仕事をやり直す必要性を感じたのだろうか?
「私、このクルマを買ったんですよ」と、カラムはトップギアに語っている。「信じられないかもしれませんが、私は自分がデザインした車を所有したことがありませんでした。多くの人は、自分がデザインした車を手に入れるのは当然だと思っていますが、残念ながらそうではありません」
それで彼はついに手に入れたんだね。「そして、このクルマを改めて見たときに、もう少し勉強した今では、ちょっとおかしいところがあるんじゃないかと思ったんです。当時は予算が限られていたので、どこかで妥協していたのを覚えています。自分の目的のためにデザインを変えようと思い、始めたんですよ」
このプロセスを経て、上の写真のようなクルマへと変化し、350以上のエンジニアリング、デザイン、材料の変更がなされ、道路やサーキットでの20,000マイル(32,000km)以上のテストの対象となっている。
カラムが「毎日使えるようにしなければならない」という部分に固辞していたため、一夜にして頂点を切り裂くようなヒーローになったというわけではない。しかし、この市販バージョンでは、ビルシュタイン製のダンパー、新しいブッシュ、剛性の高いアンチロールバー、車高を10mm下げ、60mm幅のトレッド(こういった部分はみな、オリジナルでは「十分に強いアピール」ではなかったというカルムの信念に応えるため)、そしてミシュランのパイロットスポーツタイヤが採用されている。
中身は、さらにパワフルになっている。5.9リッターV12は580hpまでパワーアップし、特注のカーボンインテークシステムのほか、特別にチューニングされた等長ステンレス製マニホールドを採用しています。初代ヴァンキッシュはすでに異世界のようなサウンドを奏でていたが、今回のヴァンキッシュは 「響き渡るV12の遠吠え 」を約束している。いい時代になった。
その怪物のようなエンジンは、マニュアル、セミオートマチック、フルオートマチックのいずれかのギアボックスを選択することができる。「私は特にマニュアルに夢中になるとは思っていませんでしたよ」とカラムはトップギアに認めている。「でも、マニュアル車の方が使いやすくて、より夢中になれるんです」全体的に、「よりタイトで、より活発」と感じるクルマの仕上がりを約束されている。
フロントとリアはより「主張した」ものになり、「モダンな感じ」になり、ヘッドライトとテールライトにはLEDが採用され、ボディカラーのオプションは「無限」に増え(トリムカラーは8色)、さらにカラムが決して満足していなかったヴァンキッシュの一部であるインテリアも手直しされている。「元々のヴァンキッシュでは、簡単に組み立てることができるようにデザインされていると感じていました。私たちはオーダーメイドの車を作っているので、以前のような製造工程の必要性はありません」と彼は言う。
エアバッグをはじめ、あらゆる面やパネルが一新されている。ステアリングホイールも薄くなり、車内では以前よりも低い位置に座ることができる。もちろんレザーが随所に施されているが、そのほかにも、取り外し可能なブレモンの懐中時計、ブラッシュドまたはポリッシュドダーククロームのディテール、カーボントリムの代わりにウォールナットパネルのオプションなど、さまざまな工夫が凝らされているのだ。オリジナルのヴァンキッシュのインテリアの「テーマ」は今でも受け継がれていますが、ここではもう少し細部にまでこだわっている。
R-リフォージドとのコラボレーションにより、チームは9月に7台のカラム ヴァンキッシュ 25の最初のバッチの製造を開始し、さらに5台の仕様を開発中だ。
「私のお気に入りの1台ですよ」とカラムはオリジナルのヴァンキッシュについて語る。「これまでに手がけたどのクルマのときよりも、純粋な思考と実行力を持っていたように思います」とカラムは語る。にもかかわらず、このバージョンに再度フォーカスを当てることは「楽しい」ことだったそうだ。「道路でこのクルマを見ただろうけれど、特徴がわかり、なぜそこにあるのかが理解できたのではないでしょうか。そして、その後、アタマの中で、分解し始めるでしょうね。
もしこのクルマが今、新車で出てきたら、世界の自動車業界の一員に見えるでしょうか?たぶん、大丈夫だと思います」
言っておくけど、今は2020年で、これは「新しい」初代アストンマーティン ヴァンキッシュなのだ。