イタリアでのみ販売されてきたストラダーレがついに世界へ
世界各地のレースで名をあげてきたダラーラ ストラダーレが日本で販売されることになった。これまでイタリア本社での販売のみであったこのクルマだったが、世界初のオフィシャルディーラーとして、日本のアトランティックカーズが選ばれた。販売に関しての発表会が行われ、当日は、アトランティックカーズ代表取締役の野澤隆之氏のほかに、ダラーラCEO&ゼネラルマネージャーのアンドレア ポントレモリ氏も来日し船出を祝った。
価格は22,565,000円(税別)からで、完全受注販売の形態をとり、納期は約10ヶ月ほど。ダラーラ ストラダーレのために新設されたファシリティにて生産が開始されており、イタリア本国では昨年末よりデリバリーが開始されている。そういえば、だいぶ前に雑誌「トップギア・ジャパン」でもインプレッションを取り上げた記憶がある。生産台数は限定600台を予定。
ダラーラ ストラダーレ(イタリア語でストラダーレ=道。ダラーラの創る公道走行が可能なスポーツカーを意味する)は、二座のレースカーのように低いバルケッタボディを持ち、軽量化と高いボディ剛性を追求するため、ドアもない。オリジナルではフロントウィンドウも持たずに小さなディフューザーが用意されているのみだ。
ボディのスタリングはイタリアのスーパースポーツを多数手がけたイタリアンデザイナーの手によるものだ。しかしダラーラ ストラダーレは、自由に、しかも簡単にカスタマイズが可能である。市販車として世界ではじめて公道仕様としての認可が下りたという、超軽量のウインドシールド、そしてタルガフレームやガルウィングドアもセットアップすることができる。バルケッタ、ロードスター、クーペと3タイプのボディ形状へと数分の作業で「トランスフォーム」することが可能なのだ。また、レーストラックでのパフォーマンスを追求するために効果的なダウンフォースを生み出すリアウィングを取り付けることもでき、これは数分で脱着が可能となっている。
ダラーラ ストラダーレは6速マニュアルトランスミッションを採用しているので、従来のスポーツカーファンにもわかりやすいメッセージを届けている。だがオプションで、シフトチェンジのタイムラグを最小限なものとするパドルシフトシステムを採用したオートマチックトランスミッションも選択することができる。また、「ノーマル」と「スポーツ」の2つの走行モードを備えている。シャシー及びボディ開発には、ダラーラが長年、世界の名だたるスポーツカーメーカーに提供してきたノウハウが詰まっている。とくに軽量化の点では、複合材とカーボンファイバーを広範囲に使用することによって乾燥総重量855kgに仕上げることができた。
具体的には、CFRPモノコックボディの成形にはオートクレーブを用いたプリプレグ製法を用い、ボディ構造体にはプレス成形を、そしてボディパネルはカーボンファイバーシートを用いた複合素材を採用したこと。オールカーボン・ファイバーボディ&シャシーは名ばかりのものではない。
サスペンションの動作、スプリング、スタビライザー、及びダンパーのセッティングは、コーナーリング性能と快適性を高いレベルで両立できるようにバランス良く設定されている。ビークルダイナミクスもダラーラ社独自のドライビングシミュレーターを使い、幾度となくテストが繰り返され、改良に改良を重ね開発されている。熟練したテストドライバーが開発エンジニア達と緊密に打ち合わせを重ね、サスペンション、エアロダイナミクス、エンジン、エルゴノミクスという重要な開発要素の設定を行った。
CFD(数値流体力学)によるデータ上での開発と自社所有の施設による風洞実験により最適化された設計により、最高時速時において820kg以上という、市販ロードカーとして最大値のダウンフォースを得ることができた。強力なダウンフォース、ビークルダイナミクス(車両運動性)、エアロダイナミクス(空力)に加えてダラーラ ストラダーレ専用にカスタマイズされたタイヤという4つの組み合わせにより、通常使用条件の下で2Gを超える横加速度に達することができる。また、最新のボッシュ製ESPスタビリティコントロールシステム(ABS-EBD-TCS-VDCを含む)が装備されており、すべての使用条件において優れたコントロール性が期待できる。
パワートレインはダラーラ ストラダーレ専用のコンポーネンツによりダラーラ・ファクトリーにてアッセンブルされた排気量2.3リッターの4気筒ターボ・エンジンを採用している。ボッシュ社と共同開発されたエンジンマネージメントシステムとのマッチングにより、400hpを超える最高出力を発揮する。
ダラーラの創始者は、ジャンパオロ ダラーラ氏。2015年に20人のエンジニアと5人のメカニックが、ジャンパオロ ダラーラの元へ集い、「ストラダーレ」プロジェクトがスタートした。「公道・サーキットを問わずドライビングの持つ本当の歓びを皆に伝えたいのです。それも最高レベルの安全性と共に」そうジャンパオロ ダラーラは集まったメンバー達に熱く語りかけた。「コーリン チャップマンこそが、きっとこのモデルの本質を高く評価してくれるに違いありません。ダラーラ ストラダーレはレースにおける戦い、そして、多くのスポーツカー開発から学んだ経験から誕生しました。ステアリングを握れば誰でもが『クルマを運転する』ことの喜びとは何かを理解してもらえると思います」と。
ジャンパオロ ダラーラ(GianPaolo Dallara)は、イタリア、パルマ生まれ。パルマ大学を経てミラノ工科大学卒業後、1959年フェラーリ入社。続いて1961年マセラティの技術開発室へ。1963年には創業開始したランボルギーニに移り、チーフエンジニアとしてミウラに至るロードカーを開発。1969年ランボルギーニ退社し、技術開発オフィスを起こし、デ・トマソの技術開発顧問として、フランク ウィリアムと共にF1マシーン開発を行う。同時にパンテーラなどデ・トマソのロードカー開発も担当した。1972年に『ダラーラ・アウトモビリ』を創立し、フォーミュラカーのシャーシ設計、製造を主に行う。インディカー開発のほか、世界のハイパフォーマンスロードカーのエンジニアリング開発も行っている
「未来のミウラを作りたい」という、ジャンパオロ ダラーラの言葉を具現化させたものが、このダラーラ ストラダーレなのだ。
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