MUTT(マット)はイギリスのバーミンガムで生まれたモーターサイクルブランドである。機械工業の街として産業革命の中心の地として栄え、いまでも当時の歴史的建造物が多く残る。造形芸術・ビジュアルアートも盛んで近現代美術館やギャラリーが点在し、パブリックアートも街中で多く見られる。また、マットのモデル名の語源となった「ブラック・サバス」に象徴されるようにヘビーメタルの発祥の地でもあり新しいカルチャーを創造し続ける街である。そんなバックグランドの中から生まれたMUTTは、他のバイクとは一線を画すユニークな世界観をもったブランドである。そんなバイクの魅力と楽しみ方をMUTT東村山の専務取締役である長尾宏之さんにお聞きした。
MUTT東村山は東京の西部、新青梅街道沿いの東村山富士見町3丁目に位置する。狭山湖や奥多摩、秩父の方へツーリングに行かれる方は馴染み深い場所なのではないだろうか。
電車で来店する方は、西武新宿線の「東村山」駅、西武国分寺線の「小川」駅、西武多摩湖線の「武蔵大和」駅が最寄りとなるが、送迎サービスもあるのでアクセスは良い。駐車場も2台分ある。
MUTT MOTORCYCLESの看板が設置された2階建ての店舗には、水冷モデルと空冷モデル合わせて6台展示されている。少し秘密基地的な要素がありワクワクする空間である。
今回お話を伺った専務取締役の長尾宏之さんは小さい頃から車やバイクが大好きで、長く四輪の世界にいた方である。お兄さんが国産バイクディーラーから独立し、自分の店を持つことになったことをきっかけにそれをお手伝いする形でこの世界に入ってきた。そこから30年以上も輸入・国産のあらゆるジャンルのモデルを取り扱ってきたバイクのプロフェッショナルである。MUTTに関しても日本に上陸した2013年から取扱を開始しており、経験も深い。
MUTTの最大の魅力はそのクラシカルなスタイリングだという。販売当初は知る人ぞ知るモデルとしてクラシックバイクやカスタムバイクを求める美容師さんやデザイナーさんなど美的感度の高いお客様が多く来店したそうだが、ここのところ、特に水冷モデルのDRK-01が発売されてからは、国産モデルと比較検討をされる方も多くおり、MUTTというブランドが広く一般的に認知されてきたことを実感するという。
お客様の購入の決め手も日本車にはない「カッコよさ」だそうだ。すでに理想のカスタムが施されたスタイリングが施されていること、そして「カッコいいもの」「ヒト(他人)とは違うなにか」を所有することの喜びを感じることができることがMUTTの魅力なのだろう。値段も徐々に上がり、競合車とくらべても決して安い買い物とは言えないが、これまでの「速さ」や「スペック」ではない新たなバイクの価値を「発見した」お客様がMUTTを求められるという。「価格」「スペック」「速さ」「経済性」などの理屈ではなく、自分の生活をより豊かにしてくれるのではないかというエモーショナルな「期待感」が新たな層のお客様に魅力的に映るのであろう。
最近では、バリバリのバイク乗りではない普通の方や、20代、30代の若いお客様、女性なども増えてきているという。
そしてMUTTはどのモデルを購入しても「これはいくらかけてカスタムしているの?」と“センスの良いバイク乗り”に見られることもこのブランドの大きな魅力になると教えていただいた。
MUTT東村山での一番の人気モデルは「HILTS(ヒルツ)」だという。マット系のカラーが多いなか、唯一艶のあるカラーが採用されているのが理由だという。「『大脱走』」という映画でスティーブ マックイーンが乗っていたのはトライアンフなんですけれど、あのダークグリーンにブラウンのシートという雰囲気を踏襲し、オマージュして作られたのがHILTSなんです。マックイーンの役名であるヒルツ大尉にちなんでいるのですね。」と長尾さんに教えていただいた。このようにちょっとしたバックストーリーまで話していただけるとモデルへの愛着も湧くものである。
「MUTTは国産のネオクラシックと違ったハイブリッドモデルです」と長尾さんは続ける。最新の技術を搭載してスタイリングをクラシックにした国産バイクと違い、MUTTはクラシカルな技術に新しい技術を組み入れたハイブリッド型のモデルなので、この点はどんなお客様にもきちんと説明するという。MUTTならではの良い部分もあれば弱点もあるのでそこを包み隠さず正直にお話することで、後々お客様の期待を裏切ることがなくなるという。30年以上いろいろなバイクを見てきた長尾さんの経験とコミュニケーションはお客様との固い信頼関係を生み出している。
MUTT東村山のもう一つ大きな特徴は、毎月必ずイベントを開催していることである。通常のツーリングに加え、サーキット走行会、オンロード・オフロードレース、ライディングスクールと幅が広く、ブランドを問わず、乗っているモデルのジャンルを問わずすべてのお客様にメールでご招待されているという。バイクの違う楽しみに興味を持ってもらえる良い機会で、なかには本格的にレースに参戦するようなお客様も増えてきている。
そんな中でもMUTTにお乗りのお客様は長距離のツーリングには躊躇される方も多いので、ショートツーリングや、ナイトツーリング、そして愛車とステキは写真が撮れる「映えスポット」を巡るツーリングなどブランドに寄り添った企画しているという。長尾さんの近年の悩みは、これまではツーリングのハイシーズンである夏が暑すぎて参加者が集まらないことらしい。「冬はバイクには乗らないという、これまでの固定観念を壊したいのですよ。関東では冬でも走れる場所は多いですし、最近はグリップヒーターがあるなど電熱ジャケットなどウェアも進化しているので全く問題ないのです」と語る。長尾さんは常にバイクとどうやって楽しく過ごせていけるかを考え、お客様に提案している。MUTT東村山と関わることによってバイクの新たな魅力や楽しみを発見でき、長く充実したバイクライフを送れるのではないかと感じる。
長尾さんの個人的に好きなモデルを聞いたところ、「オレのバイクはカッコいいなぁ、人よりカッコいいなぁと思いながらいつもバイクに接していて、これからもそういうバイク乗りでありたいし、お客様にも同じ思いを持ってもらいたいんです。ちょっとガキっぽいですけど…」と少しはにかみながらも、水冷エンジンを搭載したDRK-01だという答えが返ってきた。お客様にオススメしたいモデルも同じくDRK-01だという。現代的な水冷エンジンが搭載され機械的な信頼性が高くなったこと、LEDライトなどクラシックななかに近代的なデザインが融合している点が魅力だそうである。
そして「速さだけを求めず、過剰に疲れずに、そしてしっかり景色を楽しみながら走れるっていう意味でDRK-01を含めたMUTTのモデルは最適なのではないでしょうか」と語る。これは新たなバイクライフをもとめるお客様にも当てはまるが、若い頃バイクで遊び倒したような経験値の高いリターンライダーにもオススメしたいという。
「他のメーカーだとモデルチェンジすると自分のバイクが古く感じてしまうけれど、MUTTにはそれがないんですよ」という言葉も長尾さんのお客様に長く好きなバイクを楽しんで欲しいという想いを感じることができる。MUTT東村山はバイク生活の最初の一歩の背中を押してくれ、そして再びバイクの楽しみを気づかせてくれる、そんな場所である。
【編集後記】
MUTT東村山を訪れてまず驚いたことは軍服を着た兵隊さんがいたことである。東村山という土地柄、近くの横田基地に務めるアメリカ兵がよく来店するそうだが、これは数十年前に一人の兵隊さんが訪ねてきたことをきっかけにその噂が口コミで広がり、いまに至っているらしい。
また、インタビュー中に来店していたお客様は長尾さんの友人の息子さんということで親子二代に渡りお付き合いされている方も多いという。毎月必ずイベントを実施するなどお客様をとことん大事にし、面倒を見る姿勢には頭が下がる。長尾さんはバイクだけではなくその楽しみ方もお客様に提供し、集まった人たちとの新しいコミュニケーションの輪が広がってゆく、信頼関係が深くなりさらなるお客様のチャレンジを応援するというとても良好な関係性が展開しているように思えた。彼の笑顔も人を引き付ける魅力に溢れている。MUTT東村山に輸入バイクディーラー独特の敷居の高さやとっつきにくさは一切ない。質問があれは臆せずすれば、スタッフは良いも悪いもきちんと説明してくれる。こうゆうディーラーからバイクが買える人とそうでない人はその後のバイクライフも含めて相当「幸福度」に差がつくのではないだろうか…そしてMUTTというブランドをより好きになってもらえるのではないだろうか…そう感じたインタビューであった。
MUTT 東村山
349-0141 東京都東村山市富士見町3-28-15
TEL:042-392-8197
営業時間:10:00-19:00
定休日: 木曜日、第2・4水曜日
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