伝説のラリーカー「ルノー 5 ターボ」が、540馬力の狂気のEV「ターボ 3E」として現代に蘇った。フルカーボンボディにインホイールモーターを搭載し、価格は2,700万円から。トップギアはいち早くそのプロトタイプに同乗し、コルシカ島のラリーステージでその実力を体感。未完成ながらも感じた”スーパーヒーロー”の片鱗と、その唯一無二の走りをレポートする。
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一体、どんなクルマなんだ?
この5 ターボ 3Eは、初代ルノー 5 ターボの全盛期、すなわちグループBラリーのホモロゲーションカーとして君臨した80年代への、ルノーからのオマージュである。あの、他人のホイールアーチを無理やり着ているような見た目で、1.8リッター(※注)のターボエンジンがボンネットの下ではなく、ドライバーの腰の真後ろ、つまり客室に鎮座していたせいで、常にガソリン臭かった、あのクルマだ。
ただし、こちらには顕著な違いがいくつかある。最高出力は180馬力ではなく540馬力(もっとも、オリジナルの車重はエアバッグすらなかった時代ゆえに、そのエアバッグより軽かったが)。そして、新しいルノー 5と同様、動力源は電気である。
ということは、後輪駆動のルノー 5、というわけか?
まあ、飼い猫とヒョウほど違う、と言えばそうなる。このターボ 3Eは、姉妹会社のアルピーヌが製造したシャシーに、フルカーボンのボディワーク、そしてハブ/インホイール式の電気モーターを組み合わせている。ホイールベースは延長され、フロントガラスは後方に移動し、全幅は何十センチも拡げられた。実際、その幅はランボルギーニ アヴェンタドールとほぼ同じだ。我々が実際にメジャーで測ったから間違いない。そして、その切り詰められた全長と誇張された全幅のおかげで、もし今市販されていたなら、現行販売車の中で最も”真四角”なクルマになっていただろう。奇妙だが、クールな統計データだ。
それよりもクールなのが、インホイールモーターだ。新しい技術ではないが、市販車では一般的ではない。基本的には、電気モーターがリアの20インチホイールの内側に完全に収まっている。これにより、ダイレクトな駆動と、駆動輪のきめ細やかなデジタル制御が可能になる。つまり、リアアクスルの挙動を微細に管理でき(3Eのモーターはリアの2つだけ)、コーディング一つで、ありとあらゆる素晴らしい動的性能を引き出せるのだ。
もちろん、「バネ下重量の増加だ」とブツブツ言う者もいるだろう。アクスルの端でバインバイン跳ね回る部分に質量を加えるのは、通常は悪とされる。しかし、その余分なものは、賢いデータ処理で打ち消すことができる。そして、540馬力というかなりのパワーと巨大なトルクも手に入る。この、ずんぐりむっくりした小さなモンスターを、相当に活きの良いマシンにしてくれるのだ。
で、運転したの?
まだだ。しかし、かつてジャン ラニョッティの手によってその祖先が有名になった、コルシカ島のラリーステージの一つで、ラリードライバーのジュリアン スーニエ氏が駆るプロトタイプの助手席に乗せてもらうことはできた。あの、凸凹で、タイトで、崖っぷちのコルシカのラリーステージ。思わず息を吸い込んで、クルマを少しでも小さくしようと試みてしまう、あの道だ。自分と谷底との間に、約90mの空間しかないことを意識させられる、あの道だ。そして、あのガードウォール、さっきより小さく、そして脆くなっていないか?
泣き言はいいから、どんな感じなんだ?
未完成だ。しかし、このクルマがどんなものになり得るか、その片鱗は感じ取れた。そして、その結果は期待以上のものであった。走り出しから速いクルマだ。0-100km/h加速のタイムも完全に信じられる。だが、EVのパンチの効いた加速など、もはや衝撃的でも何でもない。素晴らしいのは、このクルマの動き方だ。短いホイールベースがコーナーに見事に収まる様、滑り回り、そして少々マニック(狂気的)になる様。それは、いわゆる電動スーパーカーとは違う。なぜなら、それ以上に個性があるからだ。全長が短いこと、クルマが四隅にドッシリと構える四角い塊感があること、そしてグリップが高いことを意識させられる。
プロトタイプは、ダンピングに少々手直しが必要だった。テストステージの大きなこぶでは少し跳ね、非常に効果的なブレーキでは少し前のめりになった。そして、2つのモーターが完全に同期していなかったため、電子制御LSDのような鉄壁の挙動ではなく、かなりのホイールスピンが発生した。しかし、骨格は間違いなくそこにある。このクルマと顧客の手に渡る個体との間には、まだ何ヶ月もの時間がある。全てを洗練させる時間は十分にあるだろう。
何より素晴らしいのは、このクルマが、動的な観点から、ほぼ唯一無二の感触を持っていることだ。速く走っている時の路面への座り方、視界、さらには音響に至るまで、何か特別なものがある。特定の作り物の音を出すわけではないが、キャビン内で音が反響する様は、ほとんどの速いEVが持つ抑制された聴覚的な合図とは異なり、紛れもないハッチバックのそれなのだ。陽気で、少々バカバカしく、そして本物の笑いをもたらす。小さく(て速い)ルノーが、かくあるべき姿だ。とはいえ、コーナーからの脱出におけるこのマシンのパンチ力には、本物のラリー仕様サンクでさえ畏敬の念を抱くだろう。
内装はどうよ?
これまで、我々は3Eの内装のレンダリング画像しか見たことがなかった。だから、現実が期待を裏切らないものであったのは、実に素晴らしいことだった。前席には2つのカーボン製バケットシート、後部にはボディカラーに合わせたハーフレースケージが組まれ、驚くほど広いトランクスペースがある。モーターがハブ部分に収められている利点の一つだ。ステアリングホイールはアルピーヌからの流用で(何の問題もない)、いくつかのスイッチとダイヤルが追加されている。正面には2つの10インチスクリーンがあり、見慣れないグラフィックと設定が表示されていた。
我々は「ドリフトアシスト」という設定に気づいた。これは有望だ。しかし、とっさのドリフトには、右手首のすぐそばにある、杭のようにそそり立つ油圧式サイドブレーキの方が、おそらくもっと役に立つだろう。これをクイッと引けば、クルマは後輪をロックし、エレガントな180度ターンをやってのける。もっと速く走っている時なら、それはドリフト開始の最終兵器だ。スーニエ氏はテストコースで、この急停止をかなり得意としていた。まるで電動ラリーカーのような感触のこのクルマを駆るラリードライバーとして、全くもって適切な振る舞いだ。
見慣れた部品もいくつかある。ルノーらしい部分も多く、ギアセレクターは全てのルノー車やほとんどの現行ダチア車と同じものだ。しかし、ボディカラーに合わせたプラスチックや金属パーツのおかげで、特別な感じがする。そして、それは良いことだ。ルノーが、他との差別化の必要性を十二分に認識している点も特筆すべきだろう。このクルマは、内装の素材からカラーリングまで、工場から完全にカスタマイズされた状態で手に入れることができる。
そして、もし全てを盛り込めば、135,000ポンド(2,700万円)のリストプライスは、200,000ポンド(4,000万円)近くまで膨れ上がるだろう。これは、決して安くはない。もっとも、ルノーは初期ロットとして、初代の時代に敬意を表し、1,980台のみを計画している。そして…うーん…誰か気づいただろうか? フロントホイールも20インチだということに。つまり、もう一組インホイールモーターを突っ込んで、四輪駆動の1,100馬力にすることも可能なのでは…? いや? 我々だけか、そう思うのは。
で、結局これは何なんだ?スーパーカーか、スーパーハッチか?
スーパーカーというよりは、スーパーハッチだ。しかし、それで価値が下がるわけではない。これは、何か新しいものだ。ヒョンデ アイオニック5 Nよりも攻撃的で妥協がなく、速いサルーン型EVよりも反応が機敏だ。そして、800Vアーキテクチャのおかげで、十分な性能の充電器なら、わずか15分で10%から80%まで充電できるなど、普通のことも完璧にこなす。70kWhのバッテリーで、航続距離は約400km。2人でのかなり長い旅でも実用的だろう。ただし、犬を後ろに乗せるなら、獣医代を覚悟しておくことだ。あのケージは、ブレーキング時にワンちゃんに何の優しさも示さないだろうから。
それで、助手席からの評価は?
素晴らしい。明らかに、まだやるべきことは残っている。しかし、感覚、姿勢、そして雰囲気は、全て的を射ている。現代のルノー 5 EVとも、歴史的なR5 ターボとも全く関係がないにもかかわらず、3Eは、その両者の姿勢と気質に敬意を払うことに成功している。これは、スーパーヒーロー版ルノー 5であり、漫画チックで、マンガ的なセレブリティなのだ。
ルノー 5としては非常に高価だが、これほどユニークなものとしては、信じられないほど安い。さて、我々がやるべきことは、ルノーに運転させてくれるよう説得することだけだ。
価格: 135,000ポンド(2,700万円)から
バッテリー/航続距離: 70kWh / 約400km
充電: 800V / 350kW (10-80% 約15分)
最高出力: 540馬力
性能: 0-100km/h 3.5秒未満、最高速度 270km/h
駆動方式: 後輪駆動、インホイールモーター x2
車重: 1,450kg
【補足事項】
ルノー 5 ターボ (Renault 5 Turbo): 1980年に登場した、フランスの小型大衆車ルノー 5(サンク)をベースにしたラリー競技用ホモロゲーションモデル。エンジンを後部座席の位置に搭載するミッドシップ後輪駆動レイアウトと、大きく張り出したブリスターフェンダーが特徴。
※注(初代R5ターボのエンジン): 記事本文では1.8リッター/180馬力と記載されているが、一般的に初代R5ターボの市販モデル(Turbo 1 & 2)は、1.4リッター(1397cc)のターボエンジンを搭載し、最高出力は160psであったとされる。
ジャン ラニョッティ (Jean Ragnotti): フランスの伝説的なラリードライバー。特にルノー 5 ターボを駆り、モンテカルロラリーやツール・ド・コルスで勝利を収めたことで有名。
インホイールモーター (In-wheel motor): ホイールの内部にモーターを配置する駆動方式。トランスミッションやドライブシャフトが不要になるため、設計の自由度が高まる一方、バネ下重量が増加するという課題もある。
400号記念:UK400マイルロードトリップ/フェラーリ F80/フェラーリハイパーカー:トップギア・ジャパン 069
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=海外の反応=
「デザインは最高にファンタスティックだ。だが、このパワートレインでは完全に無駄遣い。仮にこれが内燃機関だったとしても、この価格は目玉が飛び出るほど高い。この金を持っているほとんどの人間は、他の何かに使うだろうな」
「地獄のようにクールだ。でも、値段が非現実的すぎる。
たぶん、アルピーヌがあのバカ高いA110の限定車を完売させて、何か間違った教訓を学んじまったんだろうな…」
「大好きだけど、これはとてつもなく高価なハッチバックだ。この金があってEVが欲しいなら、俺ならタイカンかEQSあたりに目を向ける。こいつほど運転は楽しくないだろうが、その金の対価として、一つのこと以上のことをこなしてほしいからな」
↑「もう一つの選択肢がある。アイオニック5 Nなら、約半額で、似たような性能だ。しかもヒョンデの保証付き。中古市場にもたくさん出回ってる。そいつと、クラシックなDB9か、GRヤリスやシビックのような現行ホットハッチを手に入れるね。ルノーにしては、あまりにも高すぎる。
とはいえ、このR5はかなりクールな見た目だけど」
「このR5ターボ3Eは、明らかにラリーのために作られている(ロールケージがその証拠だ)。EVラリーカーのためのラリークラスが、そのうちできるのかね?
あと、もうターボは積んでないんだから、「ターボ」の名前は外すべきじゃないか? 古いクルマを参照するのではなく、自身の能力で勝負すべきだ」