【試乗】Hyundai アイオニック 5 N:NeシフトがMT感覚を味わえる

Hyundai アイオニック 5 N (アイオニック ファイブ エヌ)に試乗。ニュルで磨き上げられた650psのハイパワーマシンは、サーキットでどのような挙動になるのだろうか。

今年の東京オートサロンに参考出品された、HyundaiのハイパフォーマンスEV、IONIQ(アイオニック)5 Nが日本デビューを果たした。販売開始は6月5日だが、4月25日-5月30日の期間限定で特別仕様車「ファーストエディション」の購入予約が始まった。

インポーターであるHyundai モビリティ ジャパンはメディアに向けて、このアイオニック5 Nの先行試乗会を開催したので、そのファーストインプレッションを紹介しておこう。

試乗会場は、袖ヶ浦フォレスト レースウェイ。まずは開発陣からのプロダクト プレゼンテーションが行われたが、コンセプトからメカニズム、日本仕様の詳細などきわめて多岐にわたり、6人のスタッフが1時間以上も解説してくれた。このプレゼンテーションからも、アイオニック5 Nに対するHyundaiの熱い思いが感じられた。

アイオニック5 Nの「N」とは、HyundaiのR&D拠点がある韓国の南陽(ナムヤン)と、開発テストの舞台であるニュルブルクリンク サーキットの頭文字に由来する。Hyundaiのハイパフォーマンス ブランドの総称であり、メルセデス・ベンツのAMG、BMWのMに近い存在だ。

そんなNブランドが送り出したアイオニック5 Nは、その名が示すように既に日本に導入されているアイオニック 5をベースにしているが、前後の2モーターは強化され、システムのパワースペックは448kW/740Nm(Nグリン ブースト時は478kW/770Nm)というハイパフォーマンスを発揮する。このハイパワーに対応するよう、専用の電子制御サスペンションや高性能ブレーキが組み込まれている。

エクステリアは、前後バンパー/ディフューザー/アーチモールディングなどが装着されて迫力を増幅し、タイヤは275/35ZR21というワイドなピレリPゼロを鍛造ホイールに装着している。インテリアも、ヘッドレスト一体型のバケットタイプ シートにレザー ステアリングホイールやニーパッド付きのセンターコンソールなどを備え、サーキット走行などハードな走りにも対応してくれる。

ドリフトからサーキット走行、そして市街地までパフォーマンスを堪能

まずは水をまいたウエット路面で、ドリフトモードを試す。アイオニック5 Nは、ステアリングホイールのボタンなどでドライブモードを切り替えることができ、また前後モーターのトルク配分も変えることで、完全な後輪駆動にすることもできる。

ウエット路面で少しステアリングホイールを切った状態でアクセルを半分ほど開けると、簡単にテールが流れ出し、そこでカウンターを当ててうまくコントロールすればドリフト走行が楽しめる。アクセルを開けすぎてしまうと、その場でスピンしてしまうほどパワーはあり余っている。ふだん使うことはないだろうが、こんな技もできるというわけだ。

また、ローンチコントロールを使って、右足でアクセル、左足でブレーキを同時に踏んだ後にブレーキを離せば、発進から100km/hまで3.5秒しかかからない、その加速ぶりを味わうこともできる。

そんなパフォーマンスの一端を味わってから、いよいよサーキット走行へ。先導するインストラクターの指示に従い、さまざまなモードを試したが、ユニークなのはNeシフトだ。まるで8速DCTのエンジン車をステアリングホイールのパドルでマニュアルシフトするような加減速を体験できる。しかも、Nアクティブサウンド+と連携しているので、アクセルを踏んでいけばサウンドが高まり、またコーナーの手前でブレーキングしながらシフトダウンすれば、ヒール&トウで回転を合わせる空吹かしのサウンドまで発してくれる。

そんなサウンド(3種類が選べる)を発しながらサーキットを走っていると、EVに乗っていることを忘れ、ハイパフォーマンスなエンジン車を操っているような感覚が味わえる。今までのハイパワーなEVは直線加速こそスゴいものの、重い車両重量などの影響もあり、コーナリングを楽しめるようなクルマはなかった。だが、このアイオニック5 Nならワインディングロードからサーキットのスポーツ走行まで,走り好きにも十分に対応してくれることだろう。

ステアリングホイールのNGB(Nグリン ブースト)ボタンを押すと、10秒間だけ(メーターにはカウントダウン表示される)システムが478kW/770Nmにアップする。ストレートでだけ使ったが、その加速ぶりは、もはや十分以上にも思えたが。5周ほどのサーキット走行で全開加速→フルブレーキングなどを繰り返してもブレーキの効きに問題はなく、またボディ剛性の高さも実感できた。

サーキット走行の後、短時間だが一般道でも試乗できた。そこで再確認できたのは、足まわりを固めているにもかかわらず、思った以上に乗り心地が良かったこと。これならば、街中での買い物などといった日常的な使い方で、パッセンジャーから不満が出ることはないだろう。

EVであっても、ドライビングの楽しさを追求したハイパフォーマンスEV、アイオニック5 NをHyundaiは「エブリデイ スポーツカー」と呼んでいる。ドライブモードの切替えが少し煩雑だったり、EVなんだから無理にエンジン車っぽくしなくても良いのでは…なんて感じる点もあったが、エンジン車からEVへの過渡期のクルマとして、こんなクルマもありなのだろうと思う。

EVには興味はあるけれど、ハイパフォーマンスなエンジン車の魅力にはかなわない。そう思われているクルマ好きの人なら、一度アイオニック5 Nのパフォーマンスを味わってみるといい。EVでも、こんなクルマを作れるということを実感できるはずだ。(文:篠原 政明 写真:原アキラ、ほか)

■ Hyundai IONIQ 5 N ファーストエディション 主要諸元
●全長×全幅×全高:4715×1940×1625mm
●ホイールベース:3000mm
●車両重量:2210kg
●モーター:交流同期電動機×2
●最高出力:前175kW(238ps)、後303kW(412ps)
●最大トルク:前370Nm、後400Nm
●システム最大出力:448kW(Nグリン ブースト時:478kW)
●システム最大トルク:740Nm(Nグリン ブースト時:770Nm)
●バッテリー総電力量:84kWh
●最高速度:260km/h
●0-100km/h加速:3.5秒(Nグリン ブースト時:3.4秒)
●一充電航続可能距離:625km(欧州仕様値)
●駆動方式:4WD
●タイヤサイズ:275/35ZR21
●予定車両価格:900万円前後

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