日本からの細部にわたるニーズも捉え、新開発のプラットフォームでラグジュアリーSUVの多用途性、利便性を実現
アストンマーティン初のSUV、DBXが我々の目の前に登場した。それまでテストシーンなどで写真を目にしていたが、実車を間近でみると、随分とシャープな印象を受けた。日本での価格は2,299.5万円。最初の納車は2020年第2四半期に開始される予定である。
日本で行われた発表会には、バイスプレジデント/チーフ・クオリティ・オフィサーのリチャード ハンバート氏や、アジアパシフィックのマーケティング&コミュニケーションのヘッドを務めるアンドレアス ローゼン氏も来日して記者からの質問に丁寧に答え、日本市場への期待が感じられるものだった。
1913年創業のアストンマーティンは、DBシリーズをはじめ、スポーツカーが専門というイメージのブランドであったが、このDBXにより、成熟しつつあるSUV市場に一撃を加え、新たな顧客の獲得を狙う。他のラグジュアリーブランドからも、フェラーリを除いてはというエクスキューズはつくものの、正直、SUVが出揃っているという状況の現在なので、アストンマーティンとしては、ラグジュアリーなブランド価値を損なわず、SUVらしい実用性を両立させるのに、研究開発へ全力を注いだようだ。アストンマーティンの顧客層では、70%がSUVを所有しているというデータがあったという。例えば、欧米では、平均4-5台の自動車の所有があったが、セダン、スポーツカー、SUVのミックスが多く見受けられ、また、顧客からのニーズもあったことから、アストンマーティンでもSUVの開発に着手することになった。ハイパーカーも出しているアストンマーティンだが、今回のSUVに関しては、快適性や実用性も重視した。車幅は2mを超えないこと、カーナビのレベルが高いこと、収納の充実などは、日本の顧客からのリクエストを十分加味したものだ。
DBXは、ウェールズのセント・アサンに建設された新工場で年間ボリューム5,000台で生産され、新しいプラットフォームをベースにし、その優れた剛性により、オンロードとオフロードの両方で並外れたダイナミクスを発揮している。アダプティブ・トリプルチャンバー・エアサスペンションは、最新の48Vエレクトリック・アンチロール・コントロール・システム(eARC)およびエレクトロニック・アダプティブ・ダンパーと組み合わされ、ライドハイトを45mm上昇させるか、50mm下降させることが可能であり、幅広い走破力を実現する。最大渡河深水は500mmと、本格的なSUVだ。とくに、乗降時にスーツやドレスの裾を汚さないように配慮されたことは、アストンマーティンらしいSUVへの快適性の提案となっている。
パワートレインは、DB11およびヴァンテージにも搭載されている4リッター・ツインターボV8エンジンの最新バージョンを搭載した。最高出力は550ps、最大トルクは700Nmで、SUVに合わせたチューニングが施されている。9速トルクコンバーター・オートマチック・トランスミッションは、アクティブ・セントラル・ディファレンシャルとエレクトリック・リア・リミテッドスリップ・ディファレンシャル(eデフ)を備えた4輪駆動システムに合わせて調整される。0-100km/hを4.5秒で加速し、最高速度は291km/hに達し、パフォーマンスとしては申し分のない出来映えだ。
新しくできたセント アサンで、年間5,000台、既存のゲイドンで7,000台と、年間12,000台の生産を見込んでいるアストンマーティン。106年の歴史の中で90,000台が販売されてきたが、95%という、驚異の残存率となっている。DBXでは、塗装の設備を充実させるなど、ここもまた、塗装にこだわる日本人のオーダーに応えるべく、努力をしているという。
2020年春には、アストンマーティンが登場する映画「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」も公開予定と、ジャストタイミング。やはり、007とアストンマーティンの関係性の深さは、他のメーカーとは異なるものだ。DBXを機に、アストンマーティンのブランド価値が、より広い方向で多くの人々に伝播していきそうな気配を感じさせる。アストンマーティン DBXはSUV市場の大トリを飾る一台として、200年目の歴史を構築するターニングポイントとなりそうだ。
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