ただのE-タイプじゃなかった
5月19日に行われたヘンリー王子とメーガン妃の結婚式は、TV放映され、祝福の中で行われた。ジバンシーのドレスやゴスペルでの演出、15分を超える黒人主教の説教など、さまざまな話題で世界中がもちきりだったが、一般的な話題は、他のメディアでご覧いただくとして、当サイトでは、二人が乗っていたクラシックカーと、ヘンリー王子の父・チャールズがしていた時計に注目してお伝えしよう。
まず、クルマの方は、ひと目でジャガー E-タイプだとわかった人も多いはずだ。だが、こちらは、ジャガー・ランドローバー・クラシックが、ジャガーが誇る名車「E-タイプ」をレストアし電動パワートレインを搭載した「E-タイプ ゼロ」だった。フェラーリの創始者であるエンツォ・フェラーリ氏からも「世界で最も美しい車」と称賛された「E-タイプ」で初めてゼロ・エミッションを実現したという、見た目クラシックカー、中身は最新技術の一台なのだ。今回は、アメリカの文化の要素を多く取り入れるなど、これまでのロイヤルファミリーの式にはなかった演出が見られた二人の結婚式には、ぴったりな一台を選んだのではないだろうか。昨年9月に開かれた、ジャガー・ランドローバー主催の「Tech Fest 2017」にて世界初披露されている。
1968年式「E-タイプ シリーズ 1.5ロードスター」をベースにレストアし、最先端の電動パワートレインを搭載。0-100km/h加速はわずか5.5秒だ。
このクルマのために、出力220kWの電動パワートレインを特別に開発しており、リチウムイオン・バッテリー・パックは、オリジナルの「E-タイプ」に使用していた6気筒のXKエンジンと同じ寸法で、かつ重量もほぼ同じにしている。電動パワートレインは、XKエンジンとまったく同じ場所に配置できるようエキスパートによって開発されており、電動モーター(および減速ギア)もバッテリー・パックの真後ろに置き、「E-タイプ」のギアボックスと同じ場所になるようにしている。そして新しいプロペラシャフトが、キャリーオーバーされたディファレンシャルとファイナル・ドライブに電力を送る構造になっており、総重量はオリジナルの「E-タイプ」よりも46kg軽くなっている。
こちらは、現行のガソリン・エンジンやトランスミッションと同じの重量・寸法を持つ電動パワートレインを使用していることから、サスペンションやブレーキなどの車体の基本構造を変更する必要がない。そのため、電動パワートレインの統合と認証取得がシンプルになっている。さらに前後重量配分も変わらず、オリジナルの「E-タイプ」のような走りとハンドリング、乗り心地、ブレーキングが体験できるというわけだ。
6気筒のXKエンジンは、1949年から1992年まで製造していた「E-タイプ」、「XK120」、「Mark II」、「XJ6」など、当時のジャガーを象徴する大半のモデルに採用していたため、これらの車両すべてに、新しい電動パワートレインを組み込むことも可能だ。
英国コベントリーにあるジャガー・ランドローバー・クラシック・ワークスでは、熟練したエンジニア、若手エンジニア、そして実習生を含むチームが急速に拡大しており、両ブランドの「REBORN」シリーズのレストアに従事するとともに、「E-タイプ ライトウェイト」や「XKSS」といった、“NEW ORIGINAL(新しくありながらオリジナルに忠実)”な特別モデルにも携わっている。
そして、ヘンリー王子の父・ウェールズ大公チャールズが選んだ時計は、パルミジャーニ・フルリエの『トリック クロノグラフ』だった。
時計師であり修復師である創業者のミシェル・パルミジャーニの名を冠した高級時計メゾンである、パルミジャーニ・フルリエは、1996年にスイスのヴァル・ド・トラヴェールのフルリエに誕生した。この時計はパルミジャーニ・フルリエが創業した二年後の、1998年にジュネーブサロンで発表された、トリックコレクション初のクロノグラフだ。のちに、ロンドンの時計店でチャールズ皇太子が購入したという。トリックが特徴とするゴドロン装飾が二重になってベゼルを飾り、プッシュボタンやラグとのバランスがクラシカルなデザインで、品格あふれる時計となっている。
時間も長いし、ずっと見ているのは正直なところ飽きてしまう結婚式だが、こういう細かな部分に着目してみると、楽しいものだ。
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