【モーガン スーパースポーツ 400】木枠の伝統に408馬力をぶち込んだ、英国発・怒涛の3125万円

英国マルヴァーンの職人たちが、ついに理性を手放した。伝統的なアルミと木材のボディに、BMW製3.0L直6ターボを押し込み、ブランド史上初となる408psのカタログモデル「モーガン スーパースポーツ 400」を誕生させたのだ。車両重量わずか1170kgの車体が3,125万円で叩き出す優雅な暴力について紐解こう。

英国ウスターシャー州マルヴァーンのピッカースレイ ロードにある歴史に彩られた赤レンガの工場。そこは、世界で最も頑固で、最も愛すべき自動車メーカーであるモーガンの本拠地だ。彼らは100年以上にわたり、アッシュ(タモ材)のフレームにアルミのボディを被せるという、現代の効率至上主義からすれば「正気の沙汰ではない」伝統的な製法を守り抜いている。そんな彼らが、またしても我々の常識を軽く蹴り飛ばす、途方もないニューモデルを発表した。それが、2026年8月28日より日本でも販売開始となる「モーガン スーパースポーツ 400」である。

正直に言おう。我々トップギア編集部は、このプレスキットを読んで紅茶を吹き出しそうになった。なぜなら、この戦前のクラシックカーのような優雅な顔立ちをしたロードスターが、モーガンのカタログモデルとしてブランド史上初めて400psの大台を突破したからだ。これまでのモーガンといえば、ツイードのジャケットを着た老紳士が、カントリーロードをのんびりと流すための乗り物だったはずだ。それがどうだ。408psという、最新鋭のスーパーカー顔負けの出力を引っ提げてきたのである。

長いボンネットの下に鎮座しているのは、彼らの長年のパートナーであるBMW製の最新3.0リッター直列6気筒ターボエンジン、B58「01」だ。このユニットは最高出力408ps(300kW)/6500rpmを叩き出し、最大トルクに至っては1250rpmという極低回転から500Nm(51.0kgf/m)を発生させる。この数字だけを見れば「なるほど、よくできたドイツ製の高性能GTカーだな」と思うかもしれない。しかし、忘れてはいけない。これが搭載されるのは、全長4,110mm、全幅1,805mmというコンパクトなサイズで、車両重量わずか1170kgしかない極めて軽量な車体なのだ。

1170kgといえば、現代の基準で言えばコンパクトカー並みの軽さである。そこに400馬力オーバーを放り込むというのは、例えるなら「英国のアンティーク家具に、巡航ミサイルのブースターをくくりつける」ような蛮行だ。事実、そのパフォーマンスは完全に常軌を逸している。0-100km/h加速はわずか3.6秒。最高速度は290km/hに達する。参考までに、ベースとなった従来の「スーパースポーツ」は最高出力340ps、0-100km/h加速3.9秒だったが、この新型はそこからさらにパワーを増強し、コンマ3秒もタイムを削り取ってきたのだ。ZF製の8速オートマチックトランスミッションを介してリアタイヤに叩きつけられるパワーは、ドライバーの理性を一瞬で彼方へと吹き飛ばすだろう。

圧倒的なパワーを手に入れたからといって、彼らはシャシーワークを疎かにしたわけではない。むしろ、ここからがモーガンの本気だ。性能向上の土台となるのは、先進的なCXVアルミニウムプラットフォームである。そして驚くべきことに、スーパースポーツ 400では、これまでオプションだった「ダイナミックハンドリングパック」が堂々の標準装備となっている。このパックには、24段階の減衰力調整が可能なフロントおよびリアのナイトロン製ダンパーが含まれており、バルブやスプリングレートもこの408psの出力に合わせて専用に再調整されているという。

かつての「リーフスプリングでピョンピョン跳ね回る」クラシックカーの面影は、もはやシャシーには一切存在しない。サスペンションジオメトリの見直しにより、ドライバーの操作に対して現代のスポーツカーに匹敵する正確さと安定感で応えてくれる。さらに、オプションとしてリミテッドスリップディファレンシャル(LSD、652,300円)を追加すれば、トラクション性能を限界まで引き上げることも可能だ。足元にはバネ下重量を大幅に軽減する新デザインの軽量鍛造19インチ「Sportlite」アロイホイール(ミッドシルバーが標準)が奢られている。弟分の「プラス フォー」が15インチのワイヤーホイールを履いているのに対し、このモンスターは19インチの鍛造ホイールに極太のタイヤを組み合わせているあたりに、本気度が伺えるというものだ。


エクステリアのデザインは、その凶暴な性能を声高に叫ぶような下品な真似はしていない。あくまで英国の紳士としての節度を保ちながら、注意深く見れば分かる程度の「凄み」を効かせている。新設計のフロントウィングベントは冷却性能を高めつつボディにすっきりと溶け込み、ロワーボディワークはサテングレーからグロス仕上げに変更され、流麗なアルミボディとのコントラストを際立たせている。チーフデザインオフィサーであるジョナサン ウェルズが語るように、エレガントで型破りなプロポーションは健在だ。

室内空間に目を向けると、モーガンの『カラー マテリアル フィニッシュ(CMF)』戦略がいかに成熟しているかがよく分かる。シートやドアパネルには専用のステッチパターンが施され、フルレザー内装に加えて、アルカンタラのオプション(2トーン内装で605,000円)も豊富に用意されている。計器盤は英国の伝統的なスミス計器の製造元、ケアボント社が手掛けたもので、CANおよびLIN通信という最新の頭脳を持ちながら、見た目は見事なまでにアナログの美しさを保っている。

さらに特筆すべきは、CX世代のモーガンとして初めてオプション設定された「アルミニウム製オートマチックギアセレクター」(468,600円)だろう。陽極酸化処理されたダークグレーの削り出しアルミニウムは、キャビンの中で極めてテクニカルな異彩を放っている。センターコンソールやローワーレールに選べるウッドフィニッシュのリストも狂気じみている。「アッシュオリーブ」を標準としつつ、「ローズウッドサントス」や「オークヨーロピアンスモーク」、さらには「キネティックダイヤモンドマルケトリー」など、計11種類ものマットオープングレインやマットフィニッシュが用意されている(一部を除き416,900円のオプション)。

モーガンの醍醐味といえば、その膨大なオプションリストによるパーソナライズだ。新開発のサテンペイント(1,403,600円の追加費用が必要)は、フォージドグレーやホライズンブルーなど4色が用意され、車のフォルムをより現代的に引き立ててくれる。しかし、オプションリストを眺めていて最も呆れ半分で笑ってしまったのは、「ゼンハイザープレミアムオーディオ」だ。価格はなんと1,003,200円。スーパースポーツ 400専用に開発された「新型ハイフローアクティブパフォーマンスエキゾーストシステム」が標準装備され、直6ターボの咆哮とエキゾーストノートが轟くオープンコクピットの中で、果たして100万円の高級オーディオの繊細な音色がまともに聴き取れるのだろうか? いや、そんな無粋なツッコミは野暮というものだ。モーガンのオーナーになるということは、そういう「過剰なる無駄」を愛せるかどうかにかかっている。

モーガン スーパースポーツ 400の車両本体価格は31,251,000円(消費税10%込)。現代の没個性的なEVたちが静寂の中で覇権を争う中、このクルマはあまりにもアナクロニズムであり、同時に最高に刺激的な存在だ。マシュー ホールMDが語る「純粋な走る喜び」という言葉は決して誇張ではない。これは、ただ移動するための道具ではなく、魂を震わせるための楽器なのだ。エアコンディショニングやパワーステアリングはちゃっかり標準装備されているあたりに、現代のモーガンの「したたかさ」が見え隠れする。完璧に洗練された、3,125万円の愛すべき生きた化石。もしあなたの銀行口座に余裕があり、週末の朝に退屈しているなら、迷わずディーラーへ向かうべきだ。

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