MUTTが日本のためだけに作った限定20台、BENNYʼS.LTD.×JAPAN GT-SR 250はなぜタンクを黄色にしたのか?

英国バーミンガム発祥の「MUTT」というバイクブランドをご存知だろうか。このレトロなスタイリングを持つ小排気量のカスタムバイクは、気軽に乗れて、維持が簡単、価格が手頃で、しかも大型の旧車と同じようなスタイルとサウンドを感じながら無限のカスタマイズの可能性を持つユニークなバイクである。MUTTの共同創業者BENNY氏に、この日本限定バイクへのこだわりを伺った。

MUTT Motorcycles JAPANは、MUTT GT-SR 250の特別仕様車「BENNYʼS.LTD.×JAPAN GT-SR 250」を追加し、限定20台で販売を開始した。価格は766,700円。

BENNYʼS.LTD.×JAPAN GT-SR 250 はMUTT Motorcyclesの創設者の1人であるカスタムビルダー、ベニー トーマス(Benny Thomas /写真左)の更なるインスピレーションを盛り込んだ特別なモデルである。今回、なんと言っても目立つのは、”Benny Yellow Special” の新色を纏っていること。MUTTといえばブラックというイメージを、新しい方向性で打ち出してくれている。また、専用のデカールをタンクに装備した。

■ベース車両GT-SR 250スペック
排気量:249cc
トランスミッション:5速リターン式
最大出力/トルク:13 kW (17.2 hp)/18Nm
全長×全幅×全高:2060×760×1150mm
車両重量:130kg
フューエルタンク:14L
エンジン:4ストローク シングルシリンダー

MUTT Motorcycles CEO ウィル リグ(Will Rigg/写真右)は次のようにコメントをしている。

「MUTT Motorcyclesは全ての人に受け入れられるようなバイクを作っている訳ではありませんが、日本の多くのMUTTファンは我々の信念やデザインを理解し、そのサウンドやフィーリングを愛してくれています。私はまずその事に深く感謝するとともに、日本の世界有数のカスタムバイクカルチャーの一端を担える事を光栄に思っています。

日本限定モデルとなる" BENNYʼS.LTD.×JAPAN GT-SR 250 "はヴィンテージのダートバイクの影響を強く受け、タンクの形を際立たせつつ他の部分とのコントラストを強調するイェロー” Benny Yellow Special ”をチョイスしました。通常のMUTTのラインナップにはないカラーを私はとても気に入っています。この特別なモデルはMUTTという特別なブランドの中でもさらに特別な存在で、人生をより豊かにしてくれるバイクであると考えています。

この限定モデルが多くの人に新たなインスピレーションを与え、MUTTへの興味を深めてもらうきっかけになることを願っています。

我々は今後MUTT Motorcycles JAPANとのさらなるコラボレーションを予定しており、日本のためにデザインされた特別なモデルをいくつか準備しています。

BENNYʼS.LTD.×JAPAN GT-SR 250に目を止めてくれた方にメッセージです。

” 日々のストレスを忘れて鮮やかな黄色のタンクを見て楽しんでください。これはあなたが自由になるためのマシンです”」

今回、トップギア・ジャパンでは、ベニー氏にインタビューを行うことができた。
―日本限定モデル「Benny's LTD. × JAPAN」の発売に対してどのような期待をお持ちですか?
このバイクが好評を得ることを望んでいるよ。好む人もいれば、そうでない人もいるだろうけど、MUTTの理念は全ての人を満足させることじゃない。僕らは、それぞれの人に合うMUTTを見つけて惚れ込んでもらいたいんだ。僕にとって、これは非常にクールなバイクで、通常のカラースキームとは異なるものなんだよ。

―日本市場はMUTTブランドにとってどのような意味を持つとお考えですか?
日本は僕らにとって非常に特別だ。日本のMUTTライダーは、MUTTの本質、なぜバイクがこのようにデザインされているのか、サウンド、フィーリングを真に理解してくれているように思う。これは誰にでも理解できることじゃない。これは僕らにとって非常に重要で、僕個人としても嬉しく感じると同時に、日本とより密接に協力する機会も開かれている。パイプラインには非常にクールなものが存在していて、その多くは日本市場を念頭に置いてデザインされている。

―この限定モデルは日本のバイク愛好家にどのように受け入れられると予想されますか?
マットブラックのMUTTの熱心なファンは常にいると思う。それは素晴らしいことで、僕らのラインナップには常にマットブラックのバイクがある。このイエローのバイクは全ての人の好みではないかもしれないけど、僕の個人的なお気に入りの一つであり、僕と同じように考える人がいることはわかってる。もし皆の好みが同じだったら、人生はとても退屈なものになるだろう。全てのMUTTプロダクツには居場所があると考えたいね。

―この限定モデルはMUTTのグローバル戦略にどのように貢献すると考えていますか?
僕らは常に、カスタマーの一点物であれ、MUTTがリリースする限定版であれ、様々な姿のMUTTモーターサイクルを見るのが大好きなんだ。この特別限定車のリリースが、既存のMUTTオーナーにも、また新たにバイクを試してみたい人々にもインスピレーションを与えることを望んでいるよ。今後もMUTTジャパンとの多くのコラボレーションを予定しているけれど、世界の他の市場とも特別モデルや限定版について協力していくつもりだ。

―タンクカラーとステッカーを選ぶ際に、どのような点に注目されましたか?
僕はビンテージモーターサイクル、特にビンテージダートバイクから大きな影響を受けている。もちろんMUTTはマットブラックのバイクで有名だけど、僕は他のパーツを控えめに保ちながらも、タンクの形状を引き立てる明るくシンプルな色も大好きだ。多くのビンテージバイク、特にビンテージダートバイクは明るい色のタンクがついていた。このバイクにもそのスタイルを取り入れたかったんだ。

―日本の文化やバイクシーンからどのようなインスピレーションを得ましたか?
MUTTを始める前にカスタムバイクショップを所有していた頃から、僕は常に日本のカスタムシーンから大きなインスピレーションを得てきた。チョッパーからダートバイク、速いバイクまで、日本のカスタマイザーは一貫して美しく、よく考え抜かれた高品質のカスタムバイクを作り出している。全ての角度、全てのラインが機能性とともに考慮されている。日本は世界で最もクールなカスタムバイクで有名であり、その一部に加われることを非常に光栄に思っている。

―この限定モデルを通じて、日本のお客様にどのようなメッセージを伝えたいですか?
僕からのメッセージは - 日々のストレスを忘れて、あなたのMUTTを楽しんでください。それはライダーに自由を与えるための機械です。他の全てを忘れて、道を走りましょう。その明るい黄色のタンクを見下ろして、笑顔になってください。

そして、もう一人の創設者であるウィル リグ氏に(Will Rigg)直接お話を聞く機会を得ることができた。一問一答のスタイルでこのユニークで唯一無二のブランドをご紹介したい。

ー英国ではどのような人々がMUTTモーターサイクルに乗っているのですか?
僕らのバイクは、初めてバイクに乗る人からベテランまで、さまざまなライダーに支持されているんだ。顧客は、単に実用性でバイクを選ぶのではなく、クラシックなデザインやライフスタイルの中で自分らしさを表現したいと思うクリエイティブな人が多いと思うよ。

英国では、バイクに乗り始めたばかりの初心者ライダーが多いけど、これは業界にフレッシュな顔ぶれを呼び込むというMUTTのマニフェストと一致しているのでとても歓迎しているよ。一方、経験豊富なライダーたちの熱烈な支持もあり、彼らはその独特のスタイルを求めてMUTTを選ぶんだ。クラシックな英国の美学は好きだが、実際のヴィンテージバイクは重すぎたり、メンテナンスが大変だったりと感じている年配のライダーが、完璧なソリューションとしてMUTTを選ぶといった具合にね。

そして驚くべきことにライダーのおよそ20~25%が女性であることもMUTTの特徴だね。

ーMUTTが選ばれる主な理由はなんですか?
MUTTは、そのユニークなスタイリングや細部へのこだわり、ブランドの成り立ちなどに興味を持ってくれる人が多いんだ。そして僕らの顧客は、それだけでなくMUTTを所有することで得られる活気あるライフスタイル・コミュニティの一員になることを好んでいるように思えるよ。

顧客は皆、MUTTの本物志向で無駄のないアプローチに惹かれているんだと思うね。MUTTには独自の個性があり、本物のモーターサイクルだけが持つ、生々しくメカニカルなフィーリングがある。つまり特徴的なエキゾーストノートを聴くことができ、動いている部品を直に見ることができ、自分の下にあるマシンとの深いつながりを感じられるんだ。完全にカバーされたバイクや超静かな排気音のバイクでは得られない体験だろうね。

ー英国製バイクの一般的な特徴を日本の観客にどう説明されますか?
英国企業として、僕たちはモーターサイクルデザインの黄金時代と言われる50年代、60年代、70年代を意識したスタイリングに誇りを持っているんだ。トライアンフ、ノートン、BSAなど、象徴的なモーターサイクルに代表されるこの時代は、新しいスタイルやテクノロジーが登場したエキサイティングな時代だった。しかし、僕たちにとって本当に印象的なのは、これらのバイクが職人技によっていかに美しく作られていたかということなんだ。これらのバイクは、スレンダーで機械的な芸術作品のようで、燃料タンクの形状も完璧で、すべてのパーツが全体を引き立てながら、非常にシンプルな機械としていまでも存在している。

僕たちはバイクに現代的なテクノロジーを取り入れる一方で、スポークホイール、チューブラーフレーム、レイザーバック・ツインショックのような特徴に代表されるシンプルな構造など、クラシックなブリティッシュマシンのエッセンスを中核に残しているんだ。そしてもちろん、すべてのMUTTをユニークなものにするために、さらにカスタムスタイリングのひねりを加えているよ。

ーあなたの考えるMUTTの「英国らしさ」とはなんですか?
MUTTのモーターサイクルは、英国の紳士・淑女によって設計・製造され、70年以上にわたって英国で作られてきたこれまでのバイクのように、「バイクとは2つの車輪とエンジンであるべきだ」という永遠の理念に基づいて作られている。

僕たちにとって、MUTTのシルエットは英国バイクの伝統であり、MUTTの一目でそれとわかる姿は、黄金時代のクラシックな英国製モーターサイクルの真髄を体現しているんだ。

ーMUTTの故郷である現在のバーミンガムはどのような都市で、どのような文化が発展しているのですか?
バーミンガムは活気あふれる工業都市であり、モーターサイクル発祥の地でもあるんだ。英国のクラシック・モーターサイクル・ブランドのほとんどすべてが、MUTTの現在の本社からほんの数キロのところで創業し、製造されている。現在でもこの街は、ノートン、ランドローバー、ジャガー、トライアンフなど、イギリスを代表する自動車産業の中心地なんだよ。

産業が発展するにつれ、バーミンガムはハイテクとデジタル・イノベーションの中心地へと成長している。しかし一方、芸術家、デザイナー、ミュージシャンなど多様なコミュニティが集まる創造的な地区を持つ街としても有名だよ。

ーバーミンガムの文化はMUTTのバイクにどのように反映されていますか?
MUTTのバイクデザインは、ここバーミンガムで生まれたイギリスのバイクの豊かな歴史に常に敬意を表し、カスタム文化の仕事から得た最新のクリエイティブなアイデアを取り入れているよ。もちろん音楽も私たちにとって重要な影響のひとつなんだ。バーミンガムの音楽的伝統をさりげなくデザインに取り入れるのはもちろん、地元のバンドにちなんでバイクの名前をつけるなど、わかりやすいオマージュも忘れないよ。なにしろバーミンガムはヘビーメタル発祥の地なのだからね!

MUTTはブランドとして、カスタム文化、音楽、ファッション業界の融合から生まれたんだ。カスタム文化は私たちの核であり、特にロックやパンクといった音楽、そして地元出身のアーティストから強いインスピレーションを得ているよ。

また、いくつかの異なるライフスタイルとファッションの領域からもヒントを得ているよ。それは「クラシック・ヘリテージ」、「コンテンポラリー・ストリート」、そして「アウトドア・エクスプロレーション」なんだけど、これらの影響は、3つのユニークなバイク・スタイリング・カテゴリーに反映されているんだ。空冷モデル、DRK、ADVのようにね。

ーMUTTというブランド名の由来はなんですか?
MUTTは「雑種」、つまり親がわからない犬のことを意味しているんだ。最初のMUTTバイクは、様々なバイクの部品を集めて手作りで作られた。そういった意味で「MUTT」は、小型排気量のカスタムバイクを作り始めた初期の頃、多様なリソースと創造性の融合を表現するのにピッタリの名前だったんだ。

ーモデル名はユニークですがどうやって決めているのですか?モデル名が先?デザインが先?
それは使いたい名前がすでに決まっていることもあるし、バイクのスタイルに合った名前から選ぶこともある。しかし、どの名前もMUTTにとっては個人的なものであり、その伝統と結びついているよ。

例えば 「Sabbath」だ。ベニーは僕たちにとって最初のモデルとなる黒いバイクを作り、バーミンガムの伝説的バンド、「ブラック・サバス」にちなんで名付けた。彼が完全にブラックアウトしたバージョンを作ったとき、私たちはそれを 「Blackest Sabbath」と呼んでいたよ(笑)。その後、ファットホイールバージョンが登場し、当然呼び名は 「ファット・サバス」となったね。

同様に、「ヒルツ」はスティーブ マックイーンが『大脱走』で見せた象徴的なオートバイのスタントにちなんで名付けられたんだ。

それぞれの名前には意味があり、しばしばその名前はバイクそのものと同じように進化するよ。

ーバイクのスタイリングは誰が最終決定するのですか?
すべてのMUTTは真のチームワークの結晶なんだ。ベニーが最初のコンセプトをリードするとともにスタイリングのデザインを最終決定し、それぞれのバイクを図面から実車化するには、チーム全員の協力が必要だ。僕たちはバイクに対する共通のビジョンと情熱を共有しており、すべてのMUTTモーターサイクルには僕ら一人ひとりの思いが込められているんだ。

最終的には、ベニーと僕がモデルリリースの最終決定を下すが、それぞれのバイクに僕たちの創造性とコミットメントが反映されるようにしているよ。

ーバイクのデザインを決定する際に、共通のルールや哲学はあるのですか?
すべてのMUTTは、見た目も乗り心地も真のバイクであるようにデザインされているんだ。クラシックなスタイルがにじみ出るような美しさを優先し、ライダーが満面の笑顔を見せるような体験を生み出す。僕たちの目標は、顧客にバイクを愛してもらうだけでなく、バイクを所有することに誇りを感じてもらうこと。このライダーの満足感へのコミットメントが、私たちのデザインプロセスの最前線にあるんだ。

ーロゴとアパレルが印象的ですが専属のデザイナーはいるのですか?
ロゴからアパレルに至るまで、デザインのあらゆる側面を社内のチームが担当し、一貫したブランド・アイデンティティを保証しているんだ。デザインとファッションに強いバックグラウンドを持つ創業者たちが、MUTTブランドのあらゆる要素にその専門知識を注ぎ込んでいるよ。

ーMUTTの今後の抱負はありますか?
僕たちの目標は、デザインと品質において、市場で最高の小型~中型バイクを作ることなんだ。僕たちが確立したニッチ市場を守る一方で、より幅広い顧客層やライダーを惹きつけるような商品の拡充も目指している。これまで以上に多くの新しいライダーに、僕たちのユニークなカスタムのバイブスを伝えたいと思っているよ。

ーMUTTのグローバル戦略について教えてください。特に進出したい国はありますか?
予想もしていなかった国々の顧客やライダーからの関心が高まっていることに興奮しているよ。しかし、複数の市場でバイクを販売するための技術的・法律的な複雑さを乗り越えることは、小規模なメーカーにとっては難しいことなんだ。そういう理由もあって現在は、日本のような確立された市場でのサービスを強化することに重点を置いている。また、そろそろ日本でも水冷にシフトしていく時期だけれど、当面はバイクの魅力の原点である空冷モデルを軸に、戦略的な構成をしていくつもりだ。

ー人、文化、考え方の面で英国と日本に共通点はありますか?
多くの点で文化は異なるが、スタイル、ディテール、コミュニティに対するこだわりは共通しているね。特に日本人は、これらの要素に対してより深く一貫した認識を持つ傾向がある一方、英国の消費者は好みが目まぐるしく変わることが多く、常に新鮮なアイデアを求めているように思えるよ。

ー日本のファンにメッセージを
シンプルにありがとう!

僕たちはMUTTを作るずっと前から日本に何回も来ていて、日本のバイクやカスタム文化は常に僕たちにインスピレーションを与えてくれたんだ。なので今、日本で僕たちのバイクが支持されていることはとても名誉なことだと感じているよ。

【編集後記】
MUTT創始者のWill Rigg氏が非常に気軽に、気さくにそして丁寧にインタビューに答えてくれたことが印象的だった。

MUTTの醸し出す言葉では言い表せないなんとも独特な雰囲気はどこから生まれてきたのかを知ることが今回のインタビューの一番の関心事項であったが、バーミンガム出身の伝説的なメタルバンド「ブラック・サバス」に影響を受けたと聞いて妙に納得できた。1970年代に工業都市であるバーミンガムは国際競争に敗れ、工場の閉鎖やリストラが相次いだ、そんなデカダンスな環境からも廃工場が若い芸術家の活動の中心地として再利用されるなど、しだいに芸術と文化発展の気運が高まってゆく。混沌とした時代の騒々しさや、荒々しさ、しかしその中に生まれる新しい美意識やムーブメントの残像が伝統的な英国のクラフツマンシップと融合して、MUTTが生まれたように感じる。MUTTが私達にとって心地よいのは、レトロモダンなスタイルのカッコ良さだけではなく、そんなバーミンガムの退廃的で反抗的だが、力強く美しく魅力的な当時の文化を現代に連れてきてくれているからだと感じる。
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