ディーラー探訪でブランドの今が見えてくる:MUTT静岡

バイクを購入するときに限らず人と違うものを持ちたい。自分の個性を表現したいという想いは誰にでもあるのではないだろうか。一方、自分で手を動かす時間や技術はない、また自分のセンスがどのように評価されるか不安だと考える人もいるだろう。そんな中、200台以上のカスタム経験を持つビルダーが手がけた、完成度の高いカスタムバイクが新車で買えたらどうだろう?それはあなたの人生を大きく変えるきっかけになるのではないだろうか。そんな個性的でスタイリッシュなMUTTを取り扱うMUTT静岡の白井実代表取締役にお店の魅力と特徴についてお話を伺ってきた。

今回訪れたMUTT静岡はJR安倍川駅、用宗駅から徒歩で5−6分、高速道路でも静岡ICから10分、焼津ICからも15分とアクセスしやすい場所に位置する。用宗港のすぐそばといえば、静岡の人はわかるのではないだろうか。

用宗港はシラスで有名な漁港だが、ここ数年で大きな変化を遂げており、港に隣接した海鮮レストランやマグロ加工場をリノベーションし漁港と富士山を眺めることのできるデザイナーズ温泉やおしゃれなジェラート屋さん、クラフトビールのお店などが充実し、若者や家族連れに人気のスポットに変貌を遂げている。

MUTT静岡はこの用宗港からすぐの倉庫地帯に店を構える。バイク店というよりは「秘密基地」的な雰囲気で、店の前やガレージ内に並ぶバイクをみるだけでなにかステキな宝物に出会えるのではないかというワクワク感がとまらない。代表取締役の白井実代表に話を聞くと、かつては主要街道沿いに店を構えていたが、数年前にこちらに引っ越したという。準工業地帯というエリアなので音が発生する溶接や塗装ができることが大きな理由だったそうだ。

店の雰囲気はガレージそのもので、内装はすべて白井さんがご自身でデザインされたという。かつて住んでいたカリフォルニアやメキシコで見たクルマ屋さん、バイク屋さん、雑貨屋さんからイメージして店内は装飾されており、ウッドやグリーンなども含め「大人の遊び場」のような楽しい空間に仕上がっている。

MUTTは2階のフロアに10台ほど展示されている。これだけ多くのモデルを一度に観ることができるのはお客様にとって大きなメリットであるが、工場の雰囲気を色濃く残す鉄製のリフトの横には金網が張り巡られ、MUTTが誕生したバーミンガムのfactory を思わせる、カスタムビルディングの世界観がそこには展開されている。

MUTT静岡の母体であるGT-AXELは2010年にオープンしたちょっと変わったモデルを多く扱うバイクショップである。かつて白井代表が足繁く通っていた環八沿いのバイクショップが「単気筒」や「2スト」そしてモデル単体の専門店として成り立っていることに大きな衝撃を受けたという。静岡でもこのように「尖った」バイクだけを扱うショップを開きたいというコンセプトでできたのがGT-AXELで、スタイリッシュで、当時は少なかったヴィンテージカスタムモデルの個性豊かなMUTTはこの店のコンセプトにフィットした。白井代表の考えを知っていたインポーターから早々に声がかかり日本導入初期からMUTTの取扱を開始したという。

白井代表のポリシーはプロダクトをより良い形に仕上げてお客様に渡すことだという。MUTTの工場で作られているバイクのそもそもの出荷品質や、使われているカスタムパーツの品質まで熟知していることが大きな強みである。お客様には将来的に不都合が発生しそうなパーツをあらかじめ交換して納車する「安心パッケージ」などもMUTT静岡の独自のアイデアである。これまでも多くのカスタムバイクを販売してきたが、決して安売りはしなかったという。必要であればすべて部品をバラして再調整し、お客様にきっちり納得頂いたうえで購入いただく。これが白井代表のポリシーであり、もちろん全スタッフにもこの考えは貫かれている。そのためこの姿勢が、結果的にお客様へ大きなメリットをもたらすことを知っているからだ。そのため、MUTTの新車整備には通常より多くの時間が割かれる。完璧なプロダクトをお客様に届けたいというMUTT静岡の想いはもちろん、ここからの品質情報はメーカーにも共有され、製造プロセスの改善にも反映されるという。メーカーからの信頼も厚いディーラーである。

MUTT静岡は女性のお客様が多いことも特徴の一つである。他ディーラーに聞くとせいぜい1割程度という応えが返ってくるが、ここではおおよそ3割以上は女性ライダーだという。HILTS,SABBATH,MONGRELがMUTT静岡の人気モデルである。いまでは一般的になってきたが、特に取扱を始めた当初はバイクメーカーでマットカラーを標準色として採用していたのはMUTTだけで、その目新しさから人気を集めたそうだ。お客様もおしゃれなファッションで来店される方が多い。「美的感度の高い方は、一昔前にアメリカでイギリス製の正統派バイクにブロックタイヤを履かせて楽しむといったカスタムが流行していたのをよくご存知で、潜在的にこういうスタイルがカッコいいとわかっていたのでしょうね」と白井代表は語る。

そのまんまの理想的なスタイルのバイクが新車でしかも合法的なカスタムが施され、適切な価格で登場したことで特に時代の先端を走る人たちに受け入れられたという。白井代表はこのすでに完成されたMUTTのスタイルを見て、多くの人に受け入れられると確信したという。そしてこれまでカスタムに費やしてきた時間を入念な新車整備に充てられるというメリットも生み出した。

MUTT静岡の特徴はモデルを決め打ちで見に来るのではなく「MUTT」全体を確認しにくるお客様が多いのだという。展示車を実際に目で見て、またがってじっくり吟味されるという。豊富な展示車をもつMUTT静岡のお客様の特権であるが、なぜかAKITAだけは指名買いが多いという。大きな独特の形状をもつタンクのスタイルは購入を決める決定的な要素になっているのだろう。

もちろん店舗ではそれぞれのモデルの特徴や実際の乗りやすさ、タイヤのブロックの形状の違いによる走りの違いなども説明するが、お客様はあまりそのあたりは気にされないという。
白井代表は「MUTTは走りやすいわけじゃないんですよ。ブロックタイヤ履いていて、フェンダーが小さくて泥跳ねをして、金網がついてるからライトが少し暗く見えるし、サスペンションも硬いから快適とは言い難い。だけれどそのマイナスを打ち消すだけのスタイリングの美しさや所有の満足感がMUTTの魅力なんです。」と語る。「こんな真っ黒のカッコいいバイクって他にあります?」

白井代表にオススメのモデルを聞いたところ水冷モデルのDRK-01という回答が返ってきた。最新の水冷モデルということの扱いやすさや機械的な信頼性も大きな要因だが、他のモデルにはないホイールの凝った形状とチューブレスタイヤが採用されているからだという。複雑な形状のため、洗うのが大変だが、MUTT静岡ではホイールのコーティングサービスなども提供しているという。他のモデルにない個性を持ち、ヴィンテージの雰囲気と未来的なデザインが交差するDRK-01は現代のスタイリッシュなライフスタイルを彩る最高の相棒になるのではないだろうか。

【編集後記】
MUTT静岡の白井実代表は、大きな身体に長めのヘアスタイルと髭をたくわえ、一見すると少し近寄りがたい印象を受けるかもしれないが、ひとたび言葉を交わすと非常に穏やかで、自身のスタイルを持つ格好いい大人であることがわかる。

バイクの世界だけにとどまらず、クルマやファッションなどにも詳しく、初心者ライダーからベテランライダーまできっと頼りにされる存在なのだろう。

ご自身では、すでに販売を終了したRAZORBACKが一番好きなモデルだという。着座位置が高く、大柄な白井代表でさえ足つき性が良いとは言えないそうだが、誰にでも扱えるわけではない特別な一台を操る感覚と、その極端に細いスタイリングの「振り切った」感じが好きなのだという。そんな話を聞くと、MUTTはどのモデルにも個性があり、人の感性をピンポイントに刺激する魅力を持っていることがわかる。

MUTT静岡ではあまり頻繁にオーナーを集めたツーリングイベントなどは行っていないという。MUTTに乗る人はこれまでの従来のライダーとは違い個人での時間を大切にする人が多いことも理由だが、ライダーとバイクディーラーとの間の適切に保たれた距離感が現代のユーザーにとって心地よいことを知っているのであろう。
“納得の行くまで整備したバイクを渡すので、あとは自由に楽しくバイクライフを充実させてくれ、先輩気取りのアドバイスもしないし、指図もしない。でもなにか困ったらトコトン面倒はみるので頼ってくれ”

そういった実直で謙虚な姿勢こそがMUTT静岡が多くのバイクオーナーに愛される理由だと感じた。

MUTT 静岡
421-0122 静岡県静岡市駿河区用宗1-16-10
TEL:054-266-7466
営業時間:10:00-19:00
定休日:月曜日

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