MUTTの創設者、ベニーとウィルは15年以上にわたり、200台を超えるビンテージカスタムバイクを手掛けてきた。その経験から、彼らが普段扱うビンテージバイクよりも手軽で信頼性が高く、クールで取り回しの楽なレトロスタイルの街乗りバイクを作りたいという想いを形にしたのがMUTTだ。世に小型の街乗りバイクは数あれど、オーナーの個性を表現できる一台はそう多くない。この英国生まれのMUTTの魅力について、MUTT新潟の荻原圭佑(おぎはら けいすけ)店長に話を伺った。
MUTT新潟は、JR新潟駅から車で約10分の新潟市東区竹尾4丁目に店舗を構える。新潟バイパスの竹尾ICからほど近く、日本海東北自動車道の「新潟東スマートIC」と新潟空港を結ぶ幹線道路沿いという、地元の人々には馴染み深いロケーションだ。大きな「MUTT MOTORCYCLES」の看板の奥には、黒とレンガを基調としたシックなショールームが佇む。その前に並ぶレトロなバイクたちの姿は、まるで週末の英国パブにバイク乗りたちが集っているかのようだ。
今回お話を伺った荻原圭佑さんは、現在29歳。MUTTディーラーの中でも若手の店長だという。長く四輪メカニックとして経験を積んだ後、MUTT新潟へもメカニックとして入社。現在はバイクを整備する傍ら、店長も任されるというまさに「二刀流」の活躍を見せている。180cmを超える長身にMUTTのロンTがよく似合う好青年で、メカニックにありがちな気難しさは微塵も感じさせない。彼のカジュアルでオープンマインドな姿勢そのものが、MUTTの目指すブランドの世界観を体現しているかのようだ。
MUTT新潟の商圏は広く、新潟県内はもとより、山形、福島、長野などからもファンが訪れる。世代を問わず支持されるのがMUTTの特徴だが、新潟でも20代のビギナーから、子育てが一段落した30〜40代、60代のリターンライダーまで顧客層は幅広い。特にここ最近は、女性オーナーの比率が増えているという。
「女性は男性に比べ、シンプルで美しいものを好む傾向がありますね。そしてMUTTの持つ『無骨さ』が特に支持されているように感じます」荻原店長によれば、バイク全体の雰囲気もさることながら、女性は色やパーツといった個別のディテールを決め手にすることが多いという。MUTTの「無骨さ」は、普段とは違う“もう一人の自分”を表現するための最良のツールとなるのだろう。それは、MUTTを手に入れることで、もう一つの人生が並行して始まるような感覚に近いのかもしれない。
一方、ベテランライダーは、かつての愛車を彷彿とさせる「懐かしさ」から購入するケースも多い。セカンドバイクとして手頃でありながら、カスタム済みの完成形が新車で手に入る点も魅力だ。
もちろん、価格に一瞬躊躇するお客様もいるのは事実だ。しかし、ゼロからカスタムしてこのスタイリングをこの価格で実現することの難しさや、MUTTが経験豊かなカスタムビルダーであるベニーとウィルによって生み出された信頼のブランドであるという背景を説明すると、多くの方がその価値に納得するという。
MUTT新潟の売れ筋は、HILTSとAKITAが双璧をなす。特にブラックのモデルが人気で、これは女性オーナーも同様だそうだ。
顧客の雰囲気やファッション、ライフスタイルから最適な一台を提案することもある。店頭で他のモデルを見て心移りすることはあっても、最終的には初志貫徹で決めてきた一台を購入される方がほとんどだという。それは、MUTTの顧客がいかに真剣に、モデルごとのわずかな違いまで吟味しているかの証左だろう。
「MUTTを選ばれる方は、年代を問わず情報感度が高いので、SNSでの頻繁な情報発信を心がけています」と荻原店長は語る。MUTT新潟のインスタグラムでは店舗やイベントの情報も発信されているので、ぜひチェックしてみてほしい。
MUTTの魅力を尋ねると、「見て楽しめること」という答えが返ってきた。雪でバイクに乗れない時期がある地域だからこそ、ガレージで眺めて楽しむ価値や、美しいものと暮らす満足感がより重要になるのだろう。
MUTT新潟は、単にバイクを販売・整備するだけでなく、顧客のバイクライフ全体を提案することを信条としている。2階にはアパレルも豊富に揃え、バイクに乗れない日にふらりと立ち寄る常連も多い。ブランドロゴを主張しすぎないデザインで、普段使いしやすい点が人気を集めている。
毎月のイベント開催もMUTT新潟の特徴だ。「周りに迷惑をかけてしまうのでは」と参加をためらう初心者のためのライディングレッスンや、他ディーラーとの合同ツーリングなど、コミュニティの輪を広げる企画に積極的だ。
さらに現在は、冬の間にオーナー自身が愛車を整備できるようになる「メンテナンスレッスン」も企画するなど、常にお客様の立場に立ったイベント展開を考えている点が印象的だ。
荻原店長に個人的なイチオシを尋ねると、「MASHMANN(マッシュマン)」の名が挙がった。クラシカルなデザインに、近未来的なLEDヘッドランプやウインカーを組み合わせたユニークなモデルだ。18インチのブロックタイヤ、ハイマウントのフロントフェンダー、専用のタンクバッグなど、オフロードテイスト溢れる無骨なスタイルが特徴。もともとオフロード好きだという荻原店長は、このヴィンテージトラッカーの秀逸なデザインに惹かれるという。幸運なことに、創業者ベニー トーマスの名を冠した限定モデル「BENNY'S.LTD.×JAPAN MUSHMAN 250」の在庫が、まだMUTT新潟にはあるという。気になる方は問い合わせてみてはいかがだろうか。
「服が好きなので特に感じるのですが、MUTTはシンプルな白Tとデニムで乗るだけで、すごくサマになるんです」と荻原店長。バイク自体のデザインが完成されているからこそ、乗り手のファッションを選ばない懐の深さがある。もともとおしゃれな方が自身のセンスでMUTTを選ぶケースもあれば、MUTTを手に入れたことをきっかけにファッションに目覚め、装いが変わっていく。そんなお客様の変化を見るのも嬉しいという。
「MUTTは、少し上質なアウターを手に入れる感覚に似ているかもしれません。どんなスタイルの方が乗っても“こだわりのある人”に見せてくれる。自分のライフスタイルを豊かにするきっかけになるのがMUTTというブランドです」と彼は微笑んだ。
荻原店長は今後、ディーラー外での展示会やコラボイベントを積極的に仕掛け、MUTTの魅力をさらに広めたいと語る。他地域のディーラーとも連携し、全国のMUTTコミュニティを拡大していくことにも意欲的だ。
そして、店舗がバイク好きの集うコミュニケーションの場として、気軽に「雑談」しに立ち寄れる存在でありたいと願っている。
バイクディーラーに敷居の高さを感じている若いライダーは少なくないだろう。そんな人こそ、一度MUTT新潟を訪ねてみてほしい。同世代の彼が語るMUTTの世界観と楽しみ方は、あなたのバイクライフを、ひいては人生を豊かにするきっかけになるかもしれない。
【編集後記】
荻原店長に会った第一印象は、「若い」「大きい」、そして「おしゃれ」だった。MUTTのロンTにゆったりとしたデニムという出で立ちは、まさに今どきの青年だが、彼が醸し出すカジュアルで人を惹きつける雰囲気こそ、MUTTの顧客が求めるブランドイメージそのものだと感じた。古き良きバイクショップのような面倒見の良さを持ちながら、顧客の「困りごと」を解決するイベントを企画するなど、現代的なアプローチと程よい距離感で信頼を築いている点に感心させられた。
「冬の間、ディーラーは何をしているんですか?」という問いに、「実は冬の方がバイクは売れるんですよ」と意外な答えが返ってきた。
聞けば、オンシーズンは現在の愛車を存分に楽しみ、来る春に向けてオフシーズンの冬に次のマシンを探すライダーが多いのだという。「だから春先は、納車や整備でてんてこ舞いです」と彼は笑う。
まもなく新潟は雪の季節を迎える。しかし、それはバイクに乗れない退屈な冬ではない。経験豊かなスタッフとじっくりバイク談義を交わし、春からの相棒となる最高の一台を選ぶ。そんな雪国ならではの楽しい“ポストシーズン”が、まさにこれから始まるのだ。
MUTT 新潟
349-0141 新潟県新潟市東区竹尾4丁目1番28号
TEL:025-256-8191
営業時間:10:00-19:00
定休日:火曜日、水曜日
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