なぜこの時計は”賢く”パワーを制御するのか? リシャール・ミル「RM 30-01」、その哲学はレーシングカーのそれに通ず

愛車のエンジンさながら、自ら巻き上げをON/OFFする賢い時計。リシャール・ミル新作が示す、機械式エネルギー制御の未来。

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みなさんは、自身の愛車のエンジンがいかにして最適に制御されているか、その巧妙なメカニズムに心を奪われた経験はないだろうか? 特に最新のハイパフォーマンスカーにおける、有り余るパワーをインテリジェントに制御し、必要な時にだけ解き放つあの感覚。それは、単なる速さの追求ではなく、持続可能なパフォーマンスを実現するための洗練されたエンジニアリングの結晶だ。

もし、その思想を腕時計の世界で表現したものが存在するとしたら…?

今回ご紹介するリシャール・ミルの新作「RM 30-01 オートマティック デクラッチャブル・ローター」は、まさにその問いに対する一つの答えと言えるだろう。これは単なる時計ではない。腕に纏う、極めて高度なエネルギーマネジメントシステムなのだ。その核心にあるのは、レーシングカーの設計思想と共鳴する、機能美と革新的なメカニズムへの揺るぎないこだわりである。早速、その驚くべき中身を見ていこう。

リシャール・ミルから発表された「RM 30-01 オートマティック デクラッチャブル・ローター」は、ブランドの卓越した技術力と美学が融合した最新モデルだ。

コントロールされたエネルギー:革新的なデクラッチャブル・ローター

このモデルの心臓部である自動巻きキャリバーRMAR2には、リシャール・ミル独自の「デクラッチャブル・ローター」が搭載されている。これは、パワーリザーブが十分な状態(約55時間)に達すると、巻き上げ機構であるローターが香箱(ゼンマイを収める歯車)から自動的に切り離される(デクラッチする)画期的な機構だ。これにより、ゼンマイの巻き過ぎによる過剰な張力を防ぎ、ムーブメントへの負荷を軽減。そして、パワーリザーブが約40時間まで減少すると、ローターは再び自動的に連結(クラッチイン)し、巻き上げを再開する。 11時位置のインジケーターで、ローターが巻き上げ中(オン)か、切り離されているか(オフ)を視覚的に確認できるのも、計器然としていて我々の心をくすぐる。

これは、モータースポーツにおけるエネルギー回生システムや、ターボのブースト圧制御にも通じる思想だ。常に最大の負荷をかけるのではなく、最適なエネルギー状態を維持することで、長期的な精度と信頼性を担保する。まさにインテリジェントなパワーマネジメントと言えよう。

ドライビングの感覚を腕元に:ファンクションセレクター

2時位置のプッシュボタンで操作するファンクションセレクターも、クルマ好きには馴染み深い機構だろう。 これはまるでシーケンシャルギアボックスのように、「W(巻上げ)」「D(日付修正)」「H(針合わせ)」の各モードを切り替えることができる。 リューズを多段階に引き出す煩わしさから解放され、カチリとした確かな操作感で直感的に機能を操れるのは、大きな魅力だ。

リシャール・ミルのお家芸とも言えるのが、レーシングカーの設計思想を応用した構造だ。 本モデルでも、ムーブメントとケース、ダイヤルが一体的に開発されている。 シャシーとエンジンが完璧に調和したF1マシンのように、ムーブメントはケーシングリングを介さず、シャシーマウントラバーとグレード5チタン製ネジでケースに直接固定される。

地板やブリッジには、軽量かつ高剛性なグレード5チタンを採用。 曲線が排され、ダイヤモンドをベースにした幾何学的なスケルトンデザインは、最新のハイパーカーのエンジンベイを覗き込んでいるかのような高揚感を与えてくれる。

ケースバリエーションは、精悍な「TZPブラックセラミックス」と、モータースポーツで多用される複合材を想起させる「ダークブルークオーツTPT®×ホワイトクオーツTPT®」の2種類。 価格はそれぞれCHF 220,000とCHF 225,000となっている。

この時計は、誰の腕で時を刻むべきか

さて、このRM 30-01は、いったいどんなマシンのオーナーの腕にしっくりくるだろうか。

搭載されたデクラッチャブル・ローターの思想は、有り余るパワーを理性的に制御し、効率を最大化する最新世代のハイブリッド・スーパーカーと見事にシンクロする。例えば、フェラーリ SF90ストラダーレや、マクラーレン・アルトゥーラのオーナーだ。彼らは、ただアクセルを踏み込むだけの無邪気なスピード狂ではない。いかにして内燃エンジンと電気モーターのエネルギーフローを最適化し、最も速く、そして美しくコーナーを駆け抜けるかを知る、クレバーなドライバーであるはずだ。

ガレージで愛車を磨き上げ、その複雑なパワートレインに思いを馳せながら、腕元のRM 30-01の精緻なメカニズムを眺める。ローターが「カチリ」とデクラッチする瞬間は、あたかも愛車のエンジンが最適な状態に保たれる様と重なり、至福の満足感をもたらすだろう。

あるいは、ワインディングロードを駆け抜けた後、馴染みのカフェで一息つく。ふと腕元に目をやれば、スケルトナイズされたダイヤルの向こうで、テンプが刻む28,800振動の鼓動が静かに、しかし力強く続いている。それはまるで、クールダウンする愛車のエンジンが発する心地よいメカニカルノイズのようだ。

リシャール・ミル「RM 30-01」は、時を告げるだけの道具ではない。それは、高度なエンジニアリングを理解し、その背景にある哲学を愛する我々のような人間にとって、最高の知的パートナーとなりうる存在なのだ。
400号記念:UK400マイルロードトリップ/フェラーリ F80/フェラーリハイパーカー:トップギア・ジャパン 069

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