英国の伝統的手法と最新技術が融合した6MTのモーガン プラス フォーに試乗した。ATも選べ、エアコンも完備で快適そのもの。憧れのクラシックカーの不安を解消し、誰もが楽しめる特別な一台の魅力に迫る。
1950~60年代の味わいを色濃く残すオープン2シーターのスポーツカーとは
クルマ好きにとってオープン2シーターのスポーツカーは、いつの時代も憧れの存在といえる。風と戯れながら、意のままにドライブする楽しさは何物にも代えがたい楽しみだ。最近は高性能なセダンや、ハイパフォーマンスGTが主流になっているが、伝統的なスポーツカーの存在は忘れてはならない。
現在発売されているオープン2シーターのスポーツカーのなかで、黄金時代といえる1950~60年代の味わいを色濃く残すのが英国のモーガン モーター カンパニーが送り出すプラス フォーである。独立したフロント フェンダーとリアアクスル直前に低く座るポジションは、往年のスポーツカーの文法を今に受け継ぎ、他に例を見ぬ貴重な存在といえる。
プラス フォーの起源をたどると1936年にデビューした4/4まで遡り、1950年代の4/4を基本とする。以来モーガンは現代まで進化を続けてきた、唯一となる生粋のオープン2シーターのスポーツカーなのである。
モーガン プラス フォーの進化を確認すべく、お台場で試乗してみることにした。スポーツカーでお台場を走るというとピンと来ないかもしれないが、中心部を外れるとクルマも減り、意外と走りやすいエリアなのだといえる。なかでもゲートブリッジは、オープンモデルなら潮風を感じながら爽快なドライビングが楽しめるスポットとしておすすめだ。
オープンエアのドライビングを楽しんだら、お台場のラグジャリー ホテルでアフタヌーンティーを楽しむのも、オーナーに許された至福のひと時となろう。
モーガンってどんなメーカー?
モーガン モーター カンパニーは、英国でスポーツカーを製作する自動車メーカーとしてH.F.S. モーガンにより1909年に設立された。モーガン社は、ロンドンの北西約200kmに位置するウースターシャー州マルヴァーンにファクトリーを設け、現在も同じ場所で生産を続けているメーカーである。
まず3輪スポーツカーの3ホイーラー(現在も発展型を生産中)を送り出し、すぐさまレースに挑み高性能であることを立証して確固たる地位を確立する。
1936年になると現在に至るモーガンの4輪スポーツカーの原点となる4/4が誕生する。以来ドライブを楽しむスポーツカーという基本コンセプトはそのままに、排気ガス規制や安全基準などの時代ごとの法規や要求に対応させて進化してきた。
モーガンの理念は、100年以上経った今も設立当時から変わらない。研究から設計、製作、塗装から内装にいたるまで、すべてをモルヴァン丘陵のふもとにある同社のピッカースレイロード工場で、丹念に仕上げることにこだわってきた。
すべてのモーガン車は、主にアッシュ材、アルミ、革の3つの素材を用いて、1台1台丹念にハンドビルドで製作される。その最高水準の品質は、伝統、革新、最先端技術をひとつにするための技を磨き続ける熟練職人により作られる。
モーガンを語る上で欠かせないのがウッドフレームの存在だ。創業時から軽量で高い剛性を備えるアッシュ材をフレームに使用してきた。現行のプラス フォーではアルミを主体とするフレームに進化したが、スカットルやリアコンストラクションなどに伝統のアッシュ材が引き続き使われている。
モーガン プラス フォーってどんなクルマ?
現在モーガン社の現行モデルとして発売されているのは、3リッター6気筒ターボ エンジンを積むスーパースポーツと2リッター4気筒ターボ エンジンのプラス フォーの2タイプ。
プラス フォーは、CXジェネレーションと呼ばれる、接着とリベットで構築されるアルミニウム フレームを採用した新世代のモデルとなる。さらに、スーパースポーツはCXVジェネレーションとなる。ローマ数字でCは100、Xは10なので創業から110年、CXVは創業から115年を意味しているという。
この中で注目したいのがプラス フォーだ。4/4に始まるモーガンの4輪スポーツカーの完成度を高めた最新型が現在も購入できることにある。
そしてプラス フォーで見逃せない美点が、車体のコンパクトさにある。全長3,830mm×全幅1,650mm×全高1,250mmという、今や貴重な5ナンバーサイズに収まっていることだ。このコンパクトさに加え1,013kgという軽さがドライビングの大きなアドバンテージとなり、意のままに操ることができるのである。
サスペンションも以前のモデルは古典的なフロントがスライディングピラー式、リアはリジットアクスルだったが、プラス フォーでは現代の標準といえる4輪ダブルウィッシュボーン式へと近代化され走行性能を高めている。
クラシック ラインを代表するモデルであるプラス フォーは、70年以上前に発表された4/4のシルエットを現代に継承している。子細に見ればLED化されたライト類や、ドライバー正面に配されたマルチディスプレイなど、最新のテクノロジーがさり気なく盛り込まれていることに気付こう。
しかしダッシュボード中央に配された速度計と回転計は、クラシックなデザインを受け継ぎ、4/4からの歴史を感じさせてくれる。
プラス フォーのノーズにはBMW製B48系2リッター直4ターボチャージャー エンジンが搭載され、最高出力258PSを発生する。スーパースポーツの340psに較べると非力に思えるが、車重が1013kgと軽量で、コンパクトで古典的なレイアウトなだけに充分以上のパワーといえる。
トランスミッションは6速マニュアルと、8速オートマティックが用意されており、オーナーの好みで選ぶことができる。
ところでモーガンにはストックされている即納車は存在しない。そう、すべてがフルオーダーで製作される今や貴重な存在なのである。膨大な数が用意されるボディカラーを始め、内装のレザーやウッドの素材やカラーから、シート表皮デザイン、ダッシュボードのカラーを自由に選ぶことができる。さらにはホイールのタイプ、スペアタイヤの有無、ゼッケンサークルを始めとするグラフィックなど、オーナーがイメージする1台に仕立てられるのである。
モーガンの運転は難しいの?
クラシカルなスタイリングを受け継ぐモーガン プラス フォーだけに、一見すると手強そうに見えることだろう。しかし心配はいらない。
プラス フォーはBMW製の2リッター直列4気筒ターボ エンジンを搭載し、組み合わせられる6速トランスミッションも現代のものだけに気難しさは無い。エンジンはダッシュ中央のスターターボタンを押せば、あっけなく目覚めてくれる。
トランスミッションは6速マニュアルのほか、8速オートマティックが用意され、ギアボックスが選択できる最初のモーガン車となった。2ペダルでトラディッショナル スポーツカーを楽しめるようになったのは、AT限定免許のオーナーには嬉しいニュースといえる。
クラッチは258psを受け止めるだけにやや重めだが、自然な感触でミートできる。シフトはストロークが短いだけに、スポーツカーらしい小気味よい操作ができた。ステアリングは現代のモデルだけにパワーアシストが選べる。スポーツカーらしい適度な重さを残しているが、街中や駐車場でも構えることなく操作できる。
また忘れてならないのがよく効くエアコンの存在だ。今年の夏は猛暑が続き、9月に入っても猛威を振るっている。プラス フォーのエアコンは、トップを上げておけば、猛暑日でも寒いくらいに効き、快適にドライブすることができた。ダッシュ中央にエアコンの風量と温度設定のダイヤルが備わるが、そこには一切目盛の表示がない。しかし操作すると、ドライバー正面のディスプレイに風量が表示される。ダッシュボードにクラシックな雰囲気を残しながら、さり気なくハイテクが盛り込まれていたのである。
幌の開閉の簡単さも美点のひとつだ。フロントウインドー上にある左右のキャッチを外せば簡単のオープン状態にできる。高速道路を使うときはサイドスクリーンを着けておけば風の巻き込みを減らせ、爽快なオープンエア ドライブが楽しめた。
今回の撮影ではインスタグラマーでエリーゼに乗るCar girl Moéさんに乗っていただいた。普段からマニュアルのスポーツカーに乗っているだけに、最初こそ緊張していたが自然な感触で乗ることができたという。
クラシック スポーツカーに憧れながらも、維持の大変さから手を出せなかった方にプラス フォーをお勧めしたい。メカニカル コンポーネンツは現代のものだけに信頼性が高く、通常のメンテナンスだけで済むからだ。さらにはエアコンの存在はクラシックモデルには望めないだけに、日本では何よりのアピールポイントとなろう。
ドライビングのあとはアフタヌーンティー
ドライビングを愉しんだ後はお台場に戻り、エリアを代表するラグジュアリー ホテルの代表格といえるグランドニッコー東京 台場に向かう。グランドニッコー東京 台場は食のパラダイスといえ、ガーデン ダイニングでのランチやディナーのブッフェを始め、イタリアンから中華までの本格的な料理を楽しむことができる。
今回は風と光を感じさせる空間が特徴のThe Lobby Cafe(ザ ロビーカフェ)を訪れ、アフタヌーンティー セット(7,000円)で寛ぎのひとときを楽しむことにした。10月までは季節を感じさせるシャインマスカット アフタヌーンティー セットが用意されている。シャインマスカットを贅沢に使ったセットで、3段のトレイには美しく創られた作品ともいえるドルチェが並び、視覚と味覚で楽しむことができる。
ゆったりとした空間で味わうアフタヌーンティーは、まさにリゾート感覚といえるもので、ドライビングで緊張していた体をリフレッシュしてくれる。クルマ好きにとってドライブの締めには、グルメな料理やドルチェは欠かせない存在だ。
〒135-8701 東京都港区台場2-6-1
レストラン総合案内
受付時間 10:00~18:00
Tel: 03-5500-4550
モーガン プラスフォー主要諸元 ( )内はAT仕様
全⻑:3,830mm
全幅:1,650mm
全高:1,250mm
ホイールベース:2,520mm
トレッド :F/R 1,492/1,492mm
最低地上高:125mm
⾞両重量(乾燥):1013(1009)kg
エンジン:BMW 水冷直列4気筒DOHC 16バルブ+ターボ
排気量:1998cc
ボアxストローク:82.0×94.6mm
使⽤燃料:95オクタン以上
燃料タンク容量:43L
最高出⼒:258ps/5500rpm
最大トルク:350Nm/1000-5000rpm
最高速度:240km/h
0-100km加速:5.2秒(4.8)秒
トランスミッション:6速マニュアル(8速オートマティック)
サスペンション:F ダブルウィッシュボーン+アンチロールバー
R ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:F/R ベンチレーテッド ディスク+シングルピストン キャリパー
タイヤサイズ:F/R 205/60 R15 91V
ホイールサイズ:F/R 15 x 6.5J
車両本体価格:16,687,000円(17,556,000円)
*数値はイギリス本国発表値のため、日本の⾞検証に記載される数値とは異なります。
*諸元は2024年8⽉30⽇現在のもので、予告なく変更される場合があります。
文:上野 和秀 写真:佐藤 亮太 モデル:Car girl Moé @cargirlinjapan
撮影協力:グランドニッコー東京 台場