レクサスGS450hが持つ高級車感と未来への成功

レクサスは本当に高級車か?そんな疑問を持ったモータージャーナリストの繁浩太郎氏が、レクサスGS450hに試乗した。

 そもそも「高級車」ってなんだ?

世界的な「高級車」としては、私はローロス・ロイス、ベントレー、アストンマーティンなど、気が付くとイギリス車をあげてしまうが、ドイツのメルセデス・ベンツやBMWの上級車も当然「高級車」に違いないが、さらに上級ともいえるプレミアムブランドといわれる。高級であることは当然として、世界的な認知度や販売台数が圧倒的なブランドがプレミアムブランドなのではないだろうか。

そんな中で、果たしてレクサスは「高級車」か?「プレミアムブランド」か? 探って見たくなった。そこで、レクサスの中では注目のハイブリッド・セダンGS450h(ハイブリッド)に試乗してみた。

試乗車は、オプション込みで約900万円と押しも押されもしない「高級車」だ。

だが、価格が高けりゃ「高級車」といえるのだろうか?

高級車の全幅サイズ

全長×全幅×全高は、それぞれ4,880×1,840×1,455。これが同じレクサスでもLSになると全長は5mを超える。全幅も1875とGS比で一回り大きくなる。メルセデス・ベンツSクラスは5M超えで全幅は1900だ。どう考えても、日本ではデカイ。

これがEクラスになると5M以下の4890mmで1855となりGSに近い。これでも十分日本で見ると、デカくて堂々としている。「高級車」と言える大きさだ。

全幅は1800mmあれば日本では大きく、室内も十分の広さだが、高級車とは言い難い。今では、3NOも増えて全幅1800mmの車種は多くある。やはりそんなに数が多くない事も大切だ。そう考えると全幅1850mmあたりからが高級車といえるかもしれない。ベンツのCは1810mmで、この観点では高級車と言えない。

しかし、「高級車イメージ」の車種であれば、「プレミアムブランド」という勲章はもらえる。

GS450h の動的性能

ハイブリッド車は燃費車ということで、少しおとなしいイメージも一部にはあったが、このGSに関してはそのイメージは良い意味で裏切られた。

アクセルを踏み込むと怒涛の加速になる。「決して街中では踏み込まないで下さい」という注意書きが必要なくらいだ。

また、そんなにアクセルを踏み込まなくても、ペダルに靴底が触るだけでも加速していく。

また、 ブレーキも同様に、触るだけで効くのだ。間違いなく「レクサスはよく走りよく止まる」を実感できる。

一方でこれだけ敏感過ぎると、スムーズな一定速での走行が難しいくらいだ。「能ある鷹は爪を隠す」と言うが、いつも爪が見えているのは、「高級車」じゃないかもしれない。

静粛性もスゴイ。そのドアーシールを見てもらえばわかる。3重になっているのだ。ただ、シールで大切なのは数だけでなく、そのシール機能が発揮されるボディとドアーの建て付けなのだ。

このGSの場合は建て付けもよく、完璧にシールしている。これだけの気配りがシール部分にあれば、他の部分の吸遮音性能も完璧に違いなく、その結果この静粛性がある。紛れも無く「高級車」だ。

乗り心地は、まさに我が国らしい、美国車的快適感。高速をぶっ飛ばすドイツ車にはない乗り心地だ。ハンドリングも100km/hあたりまで、数々のハイテクと緻密な技術により、FRのスッキリとしたハンドリングで日本人の多くは「高級車」と感じると思う。

なかなかガソリンが減らないので、そうそう、このクルマがハイブリッドだったと、この時点で思い出す。ハイブリッドは走ってもわかるが、本当に実感するのは、次にドライバーがガソリンをいれるまでの持久力だ。

GS450h のデザイン(静的)

次に、デザインを見てみよう。まずエクステリアだが、GS450hは、何と言っても、塗装の質が良い。ガレージの中なら電灯、外なら景色をボディ塗装面で反射させてみると、その素晴らしさが良く分かる。

「ゆず肌」と良く言うが、一般のクルマに見られる小さな凹凸面の事で、これが非常に少なく光の反射が良い。ベントレーなどさらなる高級車になると殆どないが、このGSもかなり良い。この点は紛れも無く「高級車」だ。

デザイン的には、輸入「高級車」はもちろん「普通のデザイン」ではないが、そんなにも「トンガッたデザイン」でもない。簡単に言うと堂々とした風格デザインだ。

つまり、パット見のカッコ良さよりじわっと伝わってくる質感と存在感、またひと目でそれとわかる「差別化要素」を大切にしているようだ。それは、高級車ユーザーの価値観からくるもの。ユーザーの身の回りの生活にもそういうものが多いということである。

そういう意味で言うと、GSにもそれとわかる「差別化要素」はある。例えば、その堀の深い「顔」は西欧の人のようなカッコ良さで、差別化されている。しかし、化粧は濃く、分かりやすいカッコ良さだ。

高級輸入車ユーザーの価値観とは異なるだろう。つまり、日本人高級車ユーザーの価値観で造られた「高級車」だと判断した。

高級車ユーザーの共通点は、やはり「成功者でお金持」「元々のお金持ち」などで、高級車はその象徴となる。ユーザーは、もうお金はあるので、高価なものを買えるのは当たり前で、その上で周りからは「へえ〜」とクルマとそれを選ぶ自分のセンスを尊敬してもらいたいことが根底にある。

つまり、サイズが大きい事や塗装がいい事、デザインが良いこと、上質革シート、NVH(騒音・振動・ハーシュネス)、加速は単に踏めば凄い加速とブレーキ…これらは、当たり前のことか、それに近いことなのだ。

レクサスも、高速道路の最高速度が100km/h、一般道では50~60km/h走行の日本の道路で走る限り、ユーザーにとってそのハードの素晴らしさは当たり前として感じられ、高級車の条件は揃っている。ソフト的にも「おもてなし」の装備や質感は最高だ。

GS450hは高級車なのか

日本では、昔から「高級車」はメルセデス・ベンツというユーザーは多い。

200km/h以上で走れるアウトバーンや、100km/h制限の一般道や様々な交通環境のあるドイツにおいて、できるだけ安全にクルマを走らせることができるメルセデス・ベンツのSを高級車というのは、なんとなくわかる。

しかし日本や他の国では、価格が比較的高くて世界で認められているブランドだからメルセデス・ベンツは「高級車」というユーザーは多いと思う。単なるネームバリューでそう思う人も多いかも知れない。

レクサスに無いのは、「世界で認められているブランド」つまり「高級車が多くあるヨーロッパでの成功」だ。

「ヨーロッパで成功」さすには、動的にも静的にもヨーロッパの中で際立つものに変えなければならないが、そうなると今度はメインマーケットの北米のユーザー価値観と合わなくなる可能性が出てくる。北米での台数は事業的に大切だ。

中国市場は比較的北米の価値観に近いから何とかなるとしても、日本と北米、欧州を中心としたグローバル・ブランドとして成功するのは中々難しいことだ。

しかし、一つ例がある。

アウディは20年以上かけて戦略的にプレミアムブランドを作り上げてきた。レクサスはスタートしてまだ10年。

レクサスに出来ないことは全く無い。

しかし、日本人経営者は近視が多く戦略思考は苦手という傾向がある。ただ、トヨタ自動車は創業家が経営している。豊田章男社長はメガネはしているが、頭のなかは近視ではない。孫の代まで心配できるのだ。

ブランド創りには、戦略と時間が必要だ。いずれにしても、今のレクサスは日本にとってまぎれもなく「高級車」だ。

「プレミアムブランド」までにはなっていないが、将来、必ずなると思う。

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